「人生100年時代」と言われるようになって久しい昨今。資産形成等で老後資金の準備をしつつも、少しでも長く働いて、長生きリスクに備えたいと考える人は多いでしょう。

そうは言っても、年功序列・終身雇用が当たり前に機能していた時代に社会人になり、経験を積んできた「中高年男性」にとっては、定年後はどうやって働けばいいか、むしろ今からどうキャリアに向き合えばいいのか分からないと悩んでいる人も多いようです。さらに、コロナ禍によって、急速に働き方改革が進められることも悩みを深くしているかもしれません。

今回は特別に、日本総合研究所 スペシャリスト・小島明子氏が多様なデータで「中高年の働き方」の現状を明らかにしつつ、悩める中高年男性、ひいては共に働く多くの人に前向きな提言を送る、書籍『中高年男性の働き方の未来』より第2章『中高年男性をめぐる働き方の課題』の一部を公開。

役職定年が“志気”にもたらす影響、シニア社員と若手社員の認識のギャップなど「中高年の働き方」に潜む課題が明らかに(全4回)。

※本稿は『中高年男性の働き方の未来』(小島明子著・きんざい)の一部を再編集したものです。

長生きで直面するお金の問題

生命保険文化センター※1によれば、夫婦2人で暮らすためのゆとりある老後の生活費は平均月額36万1000円である。前述したように、平均寿命は男性で81.41年、女性で87.45年のため、たとえば65歳で退職をした場合に必要とされるゆとりのある生活費のために、夫婦で必要な総費用額は、17年(夫婦2人82歳まで一緒にいた場合)×12カ月×36万1000円=7364万4000円だと計算できる。こちらの金額から、夫婦2人の年金額を引くと、必要な貯蓄額の目安がわかる。2019年6月、金融庁が公表した報告書※2には、老後のために、年金以外に約2000万円の金融資産が必要になると記載されている。退職後に、夫婦2人で暮らすことを考えた場合、年金以外に月々約5万円のお金が必要となり、それが約30年続くと約2000万円になるという話である。持ち家か否か、子どもが経済的に自立しているか否か、健康状態は良好か、といったことなどでも状況は異なる。夫婦で必要な総費用額から自身の資産状況を考慮して冷静に判断すれば、多くの人にとって必要な貯金額が2000万円になるわけではない。

日本総合研究所の調査※3では、高学歴中高年男性の年収を尋ねているが、1000万円以上と回答している高学歴中高年男性は約3割にのぼり、「600万~800万円未満」(22.1%)、「800万~1000万円未満」(18.0%)と続く数値をふまえると、約7割が600万円以上の収入を稼いでいる。一般的には、経済的に豊かな生活を送っている人が多いことが想像できる。