金融庁の調査や、つみたてNISAの採用が成長の後押しに

もうひとつの危機は「お金の問題」です。赤字が長く続きました。コモンズ投信のビジネスモデルは、長期の積立投資です。大きくまとまった資金で買い付けていただくのではなく、毎月1万円、2万円という資金で積み立ててもらう。こうして積み立てていただいた資金が徐々に大きくなり、損益分岐点を超えてくれれば、そこから先は黒字化していくのですが、それを超えるまでは出資者の方たちに増資をお願いして回る必要がありました。

幸いなことに、コモンズ投信に出資して下さっている方々は皆、弊社のビジネスモデルに理解を示し、力強く応援して下さいました。コモンズ投信のファンドを購入して下さっているお仲間も含め、大勢の人たちに支えられたお陰で、ようやく損益分岐点を超えたのが、会社を立ち上げて10年が経過してからのことです。

ちなみにコモンズ投信は直販をメインにする投資信託会社と見られていますが、決してそんなことはありません。現在、コモンズ投信のファンドを扱ってくれている販売金融機関は40社強で、数万人の方が販売金融機関経由で購入して下さっています。

「長期投資を掲げているファンドなのに、銀行や証券会社などの金融機関で販売したら、短期的な資金が入ってきて、運用が難しくなるのではないか」という意見もありますが、そうならないようにするために、私たちの運用哲学に共感してくれる金融機関にだけ、販売してもらうようにしています。

初めてコモンズ投信のファンドを扱ってくれたのは、ソニー銀行でした。当時、社長をしていた石井茂さんが「(米国の運用会社である)キャピタルのようなファンドがあれば取り扱いたいのだけど」とおっしゃっていて、コモンズ30ファンドに白羽の矢が立ったのです。

それからだいぶ経ってからのことですが、2018年1月からスタートしたつみたてNISAの対象ファンドに、コモンズ30ファンドが選ばれたことも、コモンズ投信の成長に大きく貢献しました。

現在、つみたてNISAの対象ファンドのうち、アクティブ運用のファンドは23本あり、うち日本株は実質5本しかありません。そのうちの1本に選ばれたことで、販売金融機関が40社強に拡大したのです。

さらに、金融庁が公表している「投資信託の共通KPIに関する分析について」で、良好な数字が出たことも、認知度の向上につながりました。2018年3月時点の「投資信託の運用損益別顧客比率」で、コモンズ投信が運用しているファンドを、コモンズ投信で購入しているお客様のうち、97.7%に利益が出ていることが判明。当時、実績を公表した金融機関の中でトップの成績でした。これらの出来事が、コモンズ投信の成長を後押ししてくれました。