ともに社会課題を解決する運用会社を目指して

最後に、コモンズ投信がこれから向かう先について、考えてみたいと思います。

運用会社としての持続可能性を担保するためには、運用資産残高をある程度、伸ばしていくことが大事だと認識しています。しかし、だからといって、いたずらに規模を追求しようなどとは思いません。運用会社にとって何よりも大事なのは、規模ではなく質です。私は、投資信託会社をマニュファクチャラー、つまり生産者であると認識しています。生産者としてとことん質を追求していきます。

それと同時に、私たちの想いを一人も多くの方に知ってもらいたいので、直販を大切にしつつ、私たちの想いを理解してくれる販売金融機関を通じて、「コモンズ30ファンド」と「ザ・2020ビジョン」を販売していきます。

最近、ESGをテーマに掲げた投資信託が、まるでブームであるかのように、多数設定されています。

ただ、本当の意味で中身のあるESGファンドがどれだけあるのかと言われれば、若干疑問に思わざるを得ません。というのも、ESGは環境、社会と企業統治を投資判断の中心に置くわけですが、そもそもこうした社会課題は、短期的な解決が困難なので、長期投資のファンドがその担い手であるべきと考えるからです。テーマファンドで短期的なリターンを狙うのは筋違いです。

投資家や投資先企業などとの対話を通じた価値の共創を目指し、販売会社などともファンドの想いを共有しながら社会課題に向き合うコモンズ投信

また、社会課題への企業の取り組みに対しては、その活動を後押しする投資家として、積極的な対話が求められるはずです。その意味では、ESGのインデックスファンドは対話を事実上行いませんので、アクティブファンドが担い手となるべきです。しかし、現状ではこうした本質的なファンドはとても少ないように思います。
この連載の冒頭でも申し上げましたが、コモンズ投信はこれまで投資先企業、ならびに、コモンズ投信のファンドを保有して下さっているお仲間との対話を大切にしてきました。

そうすることで、私たちの意見だけでなく、ファンドを保有して下さっているお仲間の意見も含めて投資先企業と対話を重ね、さまざまな社会課題の解決を目指す。それこそがコモンズ投信の特色であり、その特色をさらに推し進めていきたいと考えています。

というのも、これから運用業界は大きく変わるだろうと考えているからです。今までの運用会社は、投資先企業を選ぶにあたって、貸借対照表や損益計算書、キャッシュフロー計算書など、数字で現状を示す財務情報を参考にしてきました。

でも、これから企業は財務情報だけでなく、非財務情報の開示も求められるようになります。非財務情報とは、財務諸表で開示されているもの以外の企業情報のことで、たとえば企業理念やビジョン・パーパスなどの価値観、持続可能性・ガバナンス、そしてそれらを支える人財などが該当します。

したがって、これからの運用会社は、投資先企業がこれらの非財務情報を通じて、どのような社会課題を解決したいと考えているのかを把握するのと同時に、あくまでも企業の外側にいるアドバイザー、あるいはコンサルタント的な立場で、一緒に社会課題の解決に向けて汗をかく、そういう存在になるのではないかと思います。そして、それこそがコモンズ投信の、運用会社としての未来像でもあるのです。

(終わり)

取材・文/鈴木 雅光(金融ジャーナリスト)

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