長期のインフレと金利上昇の常態化が招く株価の長期停滞懸念

もし、1970年代の米国と同じように、消費者物価指数の2ケタ上昇率が長引くような状況になったら、経済は世界的に停滞し、株価はかなり不安定なものになるでしょう。

実際、1970年代を通じて深刻化したインフレ経済のもと、米国の株価がどのように推移したのかというと、1968年11月から1970年6月にかけてS&P500は33%の値下がりをした後、1972年12月にかけて高値を更新するところまで上昇。しかし、そこから1974年9月にかけて46%も値下がりしました。

その後、株価はジリジリと値を上げたものの、1972年12月につけた高値を更新したのは、1980年7月でした。高値更新まで9年半もの時間を必要としたのです。この間を「株式の死」と言います。

この20年、米国をはじめとして世界の株式市場は「長期金利の低下」と「物価の安定」という恩恵を受けて、力強く上昇傾向をたどりました。この間、投資信託の積立投資をしていた人のなかには、これらの恩恵をフルに受けて結構な利益を得た人もいるでしょう。そういう人は、恐らく多少の自慢も込めて、「やはり長期・積立・分散投資は素晴らしいよ。ほら、こんなに運用益が出ている。資産運用の王道だね」などと言うでしょう。

でも、それはこの20~30年の投資環境が、株式市場にとって追い風だったからに過ぎません。これから先、インフレと金利上昇が常態化したら、株価には強烈な下押し圧力がかかります。積立投資を5年、7年もの間続けても、さらに運用成績が悪化していくという最悪の状況も、想定しておく必要があるかも知れません。いよいよここから長期積立投資家の胆力が試されるのです。