ロシア資源の禁輸措置で西側経済は不安定化に

日本総研が4月15日にリリースしたレポート、「日本総研Research Eye」では、ロシアによるウクライナ侵攻に対する西側諸国の制裁措置のうち、ロシア産資源の禁輸措置を決定したことの影響について整理されています。

同レポートによると懸念される点は3つ。簡単にまとめると以下のようになります。

(1) ロシアから鉱物性資源や石油製品の調達を全面停止にすると、西側諸国の生産が25兆円減少する。

(2) 資源高によって北米、豪州などの資源国を除く大半の西側諸国では、所得が海外に移転する。

(3) 資源調達を巡る地政学リスクがロシアから他地域に移転する。

簡単に説明すると、(1)についてはロシアから供給を受けている資源の代替が円滑に出来ない場合は、電力や原材料不足に陥って様々な生産活動が落ち込むというものです。特にロシア依存の高い欧州のダメージが大きく、同レポートによると16兆円もの減産圧力が生じるということです。

次に(2)ですが、禁輸措置を続けるとそれに代替されるモノの需給がひっ迫し、それらの価格上昇にもつながることを指摘しています。インフレが加速すれば、その分だけ輸入している西側諸国は高い値段でモノを調達せざるを得ず、国内から輸入先の国に所得が流出・移転することを意味しています。

そして(3)は、特にEU諸国に関連したことで、現状、原油や天然ガスの主な調達先が、内戦や紛争が多い中東やアフリカ諸国であることから、ロシアからの調達が全面停止になると、これらの地域への依存度が上がる分、調達に際しての地政学リスクが高まるというものです。

今回の制裁措置が世界経済に及ぼすネガティブ・インパクトがいかに大きいものであるかが分かる内容です。なかでも(2)については、投資信託などのリスク性金融商品で資産形成をしている人たちに大きな影響を及ぼすことになるかも知れないので、今後の動向を慎重に見守る必要がありそうです。