投信会社と親会社の証券会社にある圧倒的な力関係

というのも、前述の野村アセットマネジメントのミリオンに見られるように、販売金融機関が受け取る信託報酬の額が減るとなったら、販売金融機関が信託報酬率の引き下げに抵抗する恐れがあるからです。それでも、野村アセットマネジメントや三菱UFJ国際投信がインデックスファンドの信託報酬の統一に向けて動き出したのは、朗報といって良いのかも知れません。

野村アセットマネジメントは、言わずと知れた野村證券を親会社とする投資信託会社です。また三菱UFJ国際投信は、今はもう存在してない山一證券を親会社とした山一投信、そして準大手証券会社の国際証券を親会社に持つ国際投信を源流に持っている投資信託会社です。いずれも、元をたどれば非常に長い歴史を持つ投資信託会社だけに、販売金融機関との間に、少なからぬ因縁があります。

今から30年ほど前の投資信託会社は、すべて証券会社を親会社に持っていました。そのため、両者の力関係は圧倒的に親会社である証券会社が強く、多くの投資信託会社は、親会社の収益を増やすためにたくさんの投資信託を設定し続けたという過去があります。

冒頭で触れた野村アセットマネジメントが設定・運用するミリオンのインデックスポートフォリオの信託報酬率内訳を見て、おかしいと思った人も多いのではないでしょうか。引き下げ前の料率は、委託会社が年0.41%、販売金融機関が年1.21%、受託銀行が年0.06%です。設定した投資信託を運用・マネジメントするのは投資信託会社で、販売金融機関はそれを単に販売するだけなのに、信託報酬の料率を比較すると、圧倒的に販売金融機関が高いのです。

ちなみに、野村アセットマネジメントがインデックスポートフォリオを設定したのは1987年11月のことですから、まさに親会社である野村證券の力が強かった時代です。

そういう販売金融機関優位だった時代が長かった投資信託業界だけに、野村アセットマネジメントがインデックスファンドの信託報酬率の統一に向けて動き出したのは、投資信託会社の親会社である販売金融機関への呪縛が解け始めた象徴的な出来事として、高く評価できます。