信託報酬率の引き下げで、販売金融機関にも影響が波及

昔から運用され続けてきたインデックスファンドの信託報酬が見直されてこなかった背景は、恐らく販売金融機関は引き下げたくなかったのだろうと推察されます。当然、信託報酬率を引き下げれば、販売金融機関にとって安定収益である信託報酬が減ってしまいます。

野村アセットマネジメントのミリオンで、日経平均株価に連動する「インデックスポートフォリオ」の信託報酬率(税込み)の内訳を見ると、引き下げ前は委託会社が年0.41%、販売金融機関が年1.21%、受託銀行が年0.06%でした(モーニングスター掲載)。それが1月に行われた引き下げによって、委託会社が年0.185%、販売金融機関が年0.185%、受託銀行が年0.03%になったのです。ちなみに同ファンドの純資産総額は、2022年4月1日時点で192億1800万円あります。

あくまでも仮定の計算ですが、この数字が変わらなかった場合、販売金融機関が受け取る信託報酬の額は、料率を引き下げる前だと年間2億3253万7800円ですが、料率引き下げ後は3555万3300円になってしまいます。84.71%もの減収になるわけですから、販売金融機関としてもそう簡単に応じるわけにはいかないでしょう。ミリオンの信託報酬率引き下げには、投資信託会社と販売金融機関との間で、かなり激しい攻防が繰り広げられたのではないかと推察されます。

現在、インデックスファンドの信託報酬率を統一させる動きは、野村アセットマネジメントが他のファンドでも検討していることに加え、アセットマネジメントOneが年内にTOPIXと日経平均連動型でそれぞれ信託報酬率を統一すること、さらに三菱UFJ国際投信が年内に約20本のインデックスファンドを対象に、国内資産を組み入れているものについては年0.5%、海外資産を組み入れているものについては年0.75%で統一するといった点が、同記事にも書かれていますが、これが他の投資信託会社にも広がるかどうかは、今のところ何とも言えません。