生前契約によって「自分でできないことを他者に依頼する」

おひとりさまが増えている中、自分の死後に行わなければならないさまざまなことを、生前に依頼しておくニーズが増えています。家族の関係やライフスタイルは変化していますから、独身の人に限らず、子どもに負担をかけたくないとか、事情があって死後のことを託せないという場合も多くあるでしょう。

そのニーズに応えているのが「生前契約」と呼ばれるサービスです。元々は葬儀の事前予約のことを指していましたが、現在は各種の委任契約を組み合わせることで、「自分でできなくなることを他の人にやってもらう」段取りを自分ですることを指していると理解する方が正しいでしょう。

自分でできないこととして最も極端なのが自分の葬送ですが、生前にも、判断能力が低下して金銭管理ができなくなるとか、医療や介護の利用に関する手続きができなくなるなど、生活の質を自分で保つことが難しくなることがたくさん起こり得ます。それらについて、判断能力のあるうちに契約によって信頼のおける人に委任しておくこと全般を指して生前契約と呼ばれているようです。

そのうち、死後事務委任契約は委任できる内容がある程度決められています(①医療費の支払いに関する事務②家賃・地代・管理費等の支払いと敷金・保証金等の支払いに関する事務③老人ホーム等の施設利用料の支払いと入居一時金等の受領に関する事務④通夜、告別式、火葬、納骨、埋葬に関する事務⑤永代供養に関する事務⑥相続財産管理人の選任申し立て手続きに関する事務⑦賃借建物明け渡しに関する事務⑧行政官庁等への諸届け事務)。おひとりさまの高齢者が入院したり入居したりする際に保証人を立てるよう求められる(いなければ、入院や入居ができない)ことがあるのは、その人が亡くなった後に誰がこれらの手続きをするのかが不安視されているからです。