数々の再生可能エネルギー開発とともに注目される気候工学
世界を挙げて、化石燃料からの脱却を通じてCO2の削減を目指す動きが活発だ。太陽光、風力、海流、地熱などを活用しての再生可能エネルギーの拡充や、燃焼する際にCO2を排出しない水素・アンモニアの活用、あるいは天候に左右されやすい再生可能エネルギーを効率的に使用するために欠かせない次世代蓄電池の開発など、さまざまな取り組みが進行中だ。
とりわけ、エネルギーの自給率が約12%しかない日本は、再生可能エネルギーが国産のエネルギーであることを再確認する必要がある。日本の自然環境に適した再生可能エネルギーの開発・拡充に、国はもとより企業や国民一人一人が当事者意識をもって関わっていくべきだろう。
一方、次元の異なる分野での取り組みもある。気温の上昇を抑える気候工学の活用だ。1991年にフィリピンのピナツボ火山が噴火したことで、世界の気温が約0.5度下がったことに着目して、太陽光を人工的に遮ろうというものだ。
ハーバード大学が中核となるプロジェクトは、高度20キロメートルにある成層圏に、歯磨き粉の原料にもなる炭酸カルシウムの粉末を気球で散布することをもくろむ。太陽の光を一部反射することで日傘の役目を期待する。
オーストラリアのサザンクロス大学では、対流圏の雲に塩の結晶をまく対策を進める。結晶を含んだ雲が太陽光を反射することを目指す。
ただ、冷やし方にムラが出て、急激に気候変動が起こる可能性の高いことが、スーパーコンピューターの解析で明らかになった。まだまだ研究途上という段階だが、その動向にも注目したい。
こうしたCO2削減の動きを逆回転させかねないロシアによるウクライナ侵攻――世界の人々が固唾をのんで見守る。一日も早い終息が望まれる。
執筆/大川洋三
慶應義塾大学卒業後、明治生命(現・明治安田生命)に入社。 企業保険制度設計部長等を歴任ののち、2004年から13年間にわたり東北福祉大学の特任教授(証券論等)。確定拠出年金教育協会・研究員。経済ジャーナリスト。著書・訳書に『アメリカを視点にした世界の年金・投資の動向』など。ブログで「アメリカ年金(401k・投資)ウォーク」を連載中。