昨今、増加の一途をたどる「おひとりさま」が亡くなると、遺族厚生年金はどうなる?

制度の概要を見て、遺族年金が“家族”というものと密接な関係があることが分かると思います。

ここで現在の日本の世帯についてお話しします。総務省の『人口統計調査』によると、未婚率の増加や、核家族化の影響を受けて、単独世帯(世帯員が一人だけの世帯)が増加しています。さらに2040年には単独世帯の割合は約40%に達すると予測されています。

単独世帯の年齢はさまざまであるため、単独世帯の数字がそのまま未婚率に反映されるものではありませんが、生涯未婚率の増加を加味するとこれから次のようなケースがますます増えるかもしれません。

ケース1:両親と暮らしているおひとりさまが亡くなった場合

会社員の子がおひとりさま※2で両親と同居している場合です。よくある話としては、両親が高齢になり、2人きりでは心配なので、子が実家に戻り一緒に暮らしているというケースでしょうか。

そのようなおひとりさまの子が先に亡くなると、生計を維持されていた両親は遺族厚生年金を受給できます。

さらに両親が自身の老齢年金を受給していても、遺族厚生年金額を受け取れる可能性があります。ただし、老齢厚生年金に相当する額が支給停止されるため全額支給停止となる可能性もあります(つまり、受け取れるのは老齢厚生年金との差額分ということです)。

※2 「おひとりさま」の定義はケースバイケースと思われますが、本稿では配偶者、子がいない人を想定しています。

ケース2:独立してずっと1人暮らしをしてきたおひとりさまが亡くなった場合

遺族厚生年金の受給対象者である両親は健在ですが、子は単独世帯の世帯主として暮らし、独立しているケースです。よくある話としては、実家のある地方から都会に出てきて会社勤めをしているおひとりさまというケースではないでしょうか。

そんなおひとりさまが亡くなってしまい、しかも生計維持関係者がいないと見なされた場合、遺族厚生年金を受給できる人は1人もいない、ということになります。

支給要件として、「被保険者または被保険者であった者の死亡当時その者によって生計を維持していたこと」があるためです。なお、世帯が別で遠く離れて暮らしていても、例えば実家に仕送りをしていたなどの生計維持関係が認められたら、申立てにより両親は遺族厚生年金を受給できます。