コモディティ価格が上昇する一方で株式は低調
ロシアの経済的な孤立は、世界の金融相場にどのような影響を与えているだろうか。まず注目すべきは、エネルギーや素材・穀物といったコモディティ価格の急騰だ。
コロナ禍での金融緩和などを背景に、コモディティ相場はかねてから右肩上がりで推移していた。今回のウクライナにおける地政学的リスク、そしてロシアのSWIFT除外によって、市況はさらに加熱している模様だ。
ロシアのSWIFTからの排除は、同国経済の基盤となっていたコモディティの輸出が大幅に制限されることを意味する。ロシアは原油、天然ガス、アルミニウム、ニッケル、小麦、肥料など数々の品目で世界的シェアを占める資源大国。いずれも経済活動に欠かせない必需品であり、供給不足が懸念されている。
また、株式市場に目を向けると、2022年初から見られた世界的な株安が、さらに加速している。SWIFTによる制裁も相まって急速に進むインフレを食い止めるため、米国をはじめ主要先進国はコロナ禍で引き下げていた政策金利を、早急に引き上げていく可能性がある。すでに金利上昇に弱いテクノロジー企業の株価は多くが下落傾向にある。
コモディティ価格の上昇は原油製品や食料品などの製造コストを押し上げて利益を圧迫するため、製造・小売業といったオールドエコノミー企業の株価も低調。とくに原油高は製造工程だけでなく、輸送に要する費用にも大きな影響を与えている。
過度なインフレは景気の先行きに不安感を与え、民間消費や企業の雇用・設備投資を停滞させる原因にもなり得る。そのため、中長期的には景気後退の懸念も株式市場の悪材料といえるだろう。
今回の制裁で経済的にも社会的にも孤立に追い込まれているロシアは、世界への影響力を保持する一流国家に留まれるか否かの瀬戸際に立たされている。
SWIFTによる制裁の影響力が大きいだけに、目先ではロシアの報復措置も金融市場における懸念材料の一つとなっている。ロシアとウクライナの開戦、そして今回のSWIFTの措置により、あらゆる市場の先行きは不透明感を増し、ボラティリティ(価格変動)が高まる一方だ。投資家は今後、ポートフォリオの現金比率を高めていったり、インフレに強い資源開発企業の株式やコモディティを組み込んだりするなど、さらなるリスク管理が必要となるだろう。