●前半の記事を読む>>

おひとりさまの介護問題とは

文蔵さんの不安はもっともで、実はこのまま何もせずにいると文蔵さんはかなり困った状況に陥りかねないのです。日本総合研究所が実施した調査(※1)から、いくつかのお困りポイントを挙げます。

困りごとに気付けない

高齢になれば、それまでできたことができなくなってきます。食事の用意は買い物、調理、後片付けを含む複雑な工程ですし、ゴミ捨ても分別や収集日といったルールを守りながら所定の場所まで運搬しなければなりません。思いの外、私たちの生活は込み入った手順で成り立っているのです。心身の機能が弱ってくると、こういう込み入った手順をこなすことが難しくなることがあります。

そして、何より問題を大きくするのが、問題自体に気付けないことです。マンション住民の例でもありましたが、自分がゴミ捨てをできなくなってきていることに気付けないでいるうちにいつしか家中にゴミが溜まってしまうことがあります。困っていることに気付けば何らかの手立てが打てるのですが、それが難しいと、周りが発見できるほど問題が大きくなってからの対処になってしまいます。

必要な医療処置を受けられないリスクがある

今回文蔵さんは大きな手術にはならなかったので大丈夫でしたが、もし入院し重大な処置を受けるとなった場合は、「身元引受人」「身元保証人」を求められていたでしょう。身近に署名をしてくれる人がいない場合は、医療費が未払いになるリスク、亡くなったときに引き取り手がないリスク、その人の医療処置への意向が不明確であるリスクなどのために、入院を断られてしまうことがあります。

医療行為への同意は文蔵さん本人のみの権利で、他の人が代わりに同意することはできませんが、実際には本人以外にも説明をして後々トラブルになるリスクを減らしたいという医療機関側の事情から、同意書に本人以外のサインを求められることが多くあります。