年金を受け取るために給与を下げるのは得策?
以上のように、28万円基準から47万円基準に変わるとはいえ、在職中は給与次第で年金はカットされてしまいます。長い間厚生年金に加入し厚生年金保険料が給与や賞与から差し引かれ続けたのに、年金がカットされるとなると、それが嫌で、「年金を受けるために給与を下げよう」と考える方もいるかもしれません。
しかし、28万円基準でも47万円基準でも、カットされる年金は基準額を超えた分の2分の1です。そうなると、年金はカットされていても、それ以上に給与収入があることになり、給与+年金のトータルの年収で考えると結局カット分を差し引いても、働いた方が多くなります。もし、カットされている5万円の年金を受け取るようにするためには給与を10万円下げなければならない計算となるでしょう。
給与が高いと、在職老齢年金停止の対象となるだけでなく、その分毎月の給与から控除される厚生年金保険料も高くなりますが、その掛けた分はその後の年金額の再計算によって、受給額として反映され、増額することになります。特別支給の老齢厚生年金は65歳になると受給が終わりますが、65歳からの老齢厚生年金は、老齢基礎年金とともに生涯受給することができます。多くの場合、退職後の人生が20年30年と続くと想定しなくてはならない「人生100年時代」――働ける時に保険料を掛けて増額させておくのが安心と考える方が妥当でしょう。
今回は在職老齢年金制度基準額の改正について解説しましたが、特別支給の老齢厚生年金については、雇用保険の「高年齢雇用継続給付」の受給による調整も引き続きあります。また、47万円基準への改正に合わせ、自身に20年以上の厚生年金加入期間があって当該年金の受給権がある場合、その受給額に関わらず配偶者(65歳以上)に加算される加給年金が加算されなくなります(ただし経過措置あり)。
このように年金の調整の仕組みは複雑ですが、どういった条件に当てはまると年金がカットされてしまうか、カットされた場合の年収がいくらになるかなどを把握し、現在あるいは将来のベストな働き方と年金受給ができると良いですね。