景気に左右されにくい賃貸マンションは底堅い
次に賃貸マンションですが、東京主要5区にあるワンルームマンションは、コロナ禍においても堅調に推移しています。コロナ禍が始まった2020年3月時点のNOI利回りは4.00~4.30%ですが、2021年12月時点では3.85~4.15%というように、下限、上限ともに低下しています。
総務省統計局が発表した2021年の住民基本台帳人口移動報告によると、東京23区は1万4828人の転出超過となり、このコロナ禍によって東京23区から人口流出が起こり始めているなどと、若干センセーショナルな報道がなされていますが、年代別にみると、15歳から29歳までの若者層は6万5234人の転入超過になっています。このように、東京23区外から流入してくる若者層がいきなりファミリータイプの賃貸マンションを選ぶケースは極めて稀であり、多くはワンルームタイプの賃貸マンションに住むはずです。結果、ワンルームマンションに対する需要はコロナ禍においても強く、NOI利回りの低下を促していると考えられます。
ちなみにマンションなど住居に関しては、好不況の影響を受けにくいという側面があります。オフィスビルの需要は、一般的に景気の影響を受けやすいのですが、景気が良かろうと、また悪かろうと、人には住む場所が必要です。つまりマンションは生活必需品の側面が強いため、景気が低迷している時期でも市況が底堅いという特徴を持っています。
商業施設は、コロナ禍による人流制限の影響をモロに受けるだけに、市況の悪化が懸念されるところですが、NOI利回りは2020年3月に若干上昇したものの、現在に至るまで上昇に転じる気配は見られません。コロナ禍によってネガティブな影響を受けやすい商業施設ですが、データを取った立地が「銀座中央通りで一流ブランドが出店するマルチテナントビル」という超一等地であることから、市況に及ぼす影響が軽微だったと考えられます。