大手IT企業も参入、買収活発化か

ブルーオーシャンともいえるメタバース市場にビジネスチャンスを狙う企業は少なくない。

冒頭でも紹介したメタは社名変更発表の際、メタバースに注力すると述べている。すでに2014年に買収したハードウェア開発を行うOculus VRより、VRゴーグル等のハードウェアを販売。また、職場向けのVRプラットフォームHorizon Workroomsをリリースし、ZOOMやslackなどの他のコミュニケーションアプリとの連携を行っている。

マイクロソフトは2022年1月、人気ゲームタイトル『コール オブ デューティー』シリーズを開発する業界大手のアクティビジョン・ブリザードの買収計画を発表。同シリーズは累計売上が30億ドルを超え、買収が成立すればマイクロソフトのゲームソフト関連事業は世界2位の売上高規模まで拡大する見通しだ。

ソニーグループは、バトルロイヤル形式の人気ゲーム『フォートナイト』の開発会社である米Epic Gamesに対し、2020年8月に2億5000ドル、2021年4月に2億ドルの出資を行った。10月には同グループ主催の大会が行われており、関係を強化する動きが見られている。

ゲーム業界がメタバースに注力しているのは、既存のサービスとの親和性が高く、抱えているユーザーも今後の優良顧客となり得る可能性が高いためだ。前述した『フォートナイト』や、スクウェアエニックスの『ファイナルファンタジー XIV』も、仮想空間でユーザーがゲームや交流を楽しめるという点に着目すれば、メタバースの一種であるといえる。特に『フォートナイト』では、ゲーム内でライブイベントやキング牧師の演説の展示が行われたこともあり、ゲームに関心のない人も巻き込んだ企画を積極的に実施している。仮想空間に触れる接点の増加が見込まれることから、ゲーム業界はメタバース市場を制する糸口とも目されている。

また、ゲーム業界外でもメタバース関連の新事業の立ち上げが活性化している。ナイキは11月22日にゲーミングプラットフォーム「ロブロックス」内に「NIKELAND」という仮想空間を開設し、アバター向けに自社ブランドの商品を販売。さらに12月にはNFT関連企業のRTFKTを買収し、メタバース関連事業の拡大が加速している。

一方、中国のIT企業テンセントは2022年1月、日本企業向けにメタバースのスタートアップ事業を展開することを発表。支援内容はゲームや電子商取引など、用途に合わせた仮想空間の構築から、コンテンツ配信までと多岐にわたる。なお中国では2021年秋から同社の支援サービスが本格的に展開しており、アバターを使った接客システム等に活用されている。