割安J-REIT買いを支えた外国人投資家の風向きが変化
今回、J-REIT市場で下落が続いた要因は、複数のことが絡み合っているように見えます。まず、外国人投資家の動向です。外国人投資家の買い基調が2021年2月から9月まで続きました。外国人投資家がJ-REITへの投資を積極化させた理由は、日本の不動産が相対的に割安だからです。しかも、2021年中を通じて円安が進んだため、外貨の購買力が対円で上昇したことも、外国人投資家から見た場合の日本の不動産価格の割安感に拍車をかけました。
また米国の年金基金など多額の資金を運用している機関投資家が、リスクヘッジを目的として、不動産のポートフォリオを地域別に分散させる動きがあります。その際、アジア・太平洋地域でこの手の資金を受け入れる最適な国のひとつが日本であると認識されていることも、日本のJ-REITが買われた理由のひとつとして考えられます。
しかし、今年に入って風向きが変わってきました。その一番の理由が、米国の金融引き締めへの動きです。インフレ率が上昇傾向をたどっていることから、1月18日の米国市場では、FRB(米連邦準備理事会)が金融引き締めを早めるという見方が強まっています。その結果、米国長期金利の指標である10年国債の利回りは、昨年末に1.5%程度だったのが、今年に入って1.8%台後半まで上昇しました。
これは日本でも同じですが、長期金利の水準が上昇すると、J-REITなど不動産投資信託の配当利回りの妙味が薄れます。結果、昨年を通じて買い越し基調だった外国人投資家が売りに転じたことで、J-REIT市場の需給バランスが悪化しました。
さらにJ-REIT市場の需給悪化の原因として、外国人投資家の動向に加え、年初から公募増資が増えていることも挙げられます。増資は投資口数が増えるため、当然1口当たりの価値は下がり、希薄化が懸念されます。1月4日から18日にかけて、日本プライムリアルティ投資法人、マリモ地方創生リート投資法人、コンフォリア・レジデンシャル投資法人、日本ビルファンド投資法人、三井不動産ロジスティクスパーク投資法人、ヘルスケア&メディカル投資法人が増資を公表しました。これらを合わせた調達金額は880億円に達しており、2021年1月の調達金額である508億円を上回っていることからJ-REIT市場の需給バランスが悪化し、東証REIT指数の価格急落につながりました。
こうした需給バランスの悪化要因に加え、21年秋から年末にかけて小康状態になっていた新型コロナイウイルスの感染拡大が再び拡大し始めたことも、マーケットのセンチメントを冷え込ませています。蔓延防止重点措置の適用を受ける地域が増えるなか、再び経済活動に停滞感が強まってきました。値がさ成長株を中心に株式市場で売りが先行していることも、同じリスク商品であるJ-REIT市場にとってはネガティブ要因になります。このように、さまざまなネガティブ要因が重なって、年明けのJ-REIT市場は続落状態が続きました。