若者たちの金融体験は親の世代とは大きく違う
現在、グローバル企業を中心に、企業年金を従来の確定給付年金から、自ら運用して年金や退職金を積み上げる企業型確定拠出年金(企業型DC)に切り替える流れが起きている。
パナソニックやソニーなどの大企業も企業型DCの制度を導入し、ソニーはすでに退職年金制度を100%確定拠出年金に切り替えた。導入企業は実施事業社数では38000社を超える(令和3年3月末時点)。当然、こういった企業に入社した若者は就職後1年目から資産運用を体験することになる。
つまり、学校で金融リテラシー教育を一切受けなかったとしても、ある一定数の生徒たちは、社会に出てすぐ否応なしにリスク資産と向き合うことになるのだ。また、企業型DCに加入しない生徒たちも、公的年金だけでは足りずにNISAやiDeCoなどを活用する機会が、親の世代より格段に増えるのではないだろうか。先生たちが「寝た子を起こしたくない」と手をこまねいて金融教育を避けていても、自己責任で投資をする将来は、少なからず今の若者にとって身近になっていく可能性が高い。
そうであれば、学校教育の中できちんと市場の仕組みや金融商品のリスクを学び、社会に出て行ったほうが、若年層がより自立した将来に向けて歩みやすいはずである。
2022年度の指導要領がスタートするのは今年の4月。家庭科で資産形成を、公民で金融経済をと教科を分けて扱うことが適切かどうかなど議論の余地もあるように思うが、教科の中で扱っていくことで、カリキュラムも少しずつ整備されていくのではないかと期待できる。今後の動向に注視したい。