過去3回にわたり、定性評価に注力する評価機関が、アクティブファンドの運用力を評価するために行っている努力や工夫についてお話ししています。前回は、運用者からのヒアリングの狙いと現地訪問調査の重要性についてお話ししました。

ファンドの運用力に対する確信度を高めるには、運用者のインタビューに加えて、多面的な情報収集が非常に重要であり、そのためには運用拠点への訪問調査が効果的であることをご説明しました。

今回は、「評価機関によるアクティブファンドの運用力評価」の最終回、および11回にわたり連載してきました「“優れた”アクティブファンドの選び方」の最終回として、評価項目などの運用力の評価体系と有効性の検証について考えます。なお今回も、運用力評価の手法や考え方は、投資信託の定性評価に日本で最も注力していると思われる評価機関(注1)の事例に基づいています。

(注1)筆者が中心メンバーとして立ち上げその定性評価手法とプロセスの確立に注力した野村フィデューシャリー・リサーチ&コンサルティング株式会社(”NFRC“、かつての野村ファンド・リサーチ・アンド・テクノロジー株式会社(”NFR&T”))

評価結果であるレーティングはどのように付与されるか

共通の評価項目ごとに採点し合計点で判定

前回お話ししました運用会社の訪問調査を終え、さまざまな参考情報を得ることができたとします。これから対象ファンドの評価を行い、運用力の優劣をレーティングで表現しようとしています。どうすれば収集した情報を整理して運用力の判定に繋げることができるでしょうか。

評価機関の考え方によって2通りの方法があると思います。

一つは評価項目や基準は特に定めず、担当アナリストが様々な要素を勘案して独自に判断する方法。この場合には、有能なアナリストがその能力を発揮しやすいものの、ファンド間で評価の基準にバラツキが生じるばかりでなく、有能なアナリストが離職した場合には評価機関の評価力が大きく劣化することになります。

もう一つは、共通の評価項目や項目ごとの基準を定め、全てのアナリストがそれらに従って採点する方法です。こちらは有能なアナリストの独自の能力が発揮される機会は少なくなる一方で、有能なアナリストを失った場合の影響を軽微に抑えることができます。

それぞれの手法は一長一短ではありますが、後ほどお話しする評価の有効性を検証し、その結果に基づき評価方法の改善を継続的に図るためには、後者の手法が優れていると思われます。

定性評価に注力する評価機関の評価体系は

定性評価に注力する評価機関では、アクティブファンドの運用力、言い換えれば今後優れた運用成績を挙げる確率、を評価するために、長年かけて以下の特徴を有する独自の評価体系を構築してきました。

● 全てのファンドは同じ評価項目に沿って評価

各評価項目はできる限り細分化
例えば、運用者の能力を一つの項目として評価を下すとすると、考慮すべき要素が多岐にわたるため、ファンドによって重視するポイントが異なってしまう可能性が高くなります。しかし、運用者の能力を、確認する事項(例:運用経験年数や対象ファンドの運用に役立つ他の業務経験など)ごとに分解して判定することで、基準の曖昧さが解消されると考えます

評価項目ごとに評価基準を定め、評価事例とともに全てのアナリスト間で共有
例えば各項目を3点満点で採点するとした場合には、1点・2点・3点それぞれの要件を明確に定め、全てのアナリストが同じ基準で採点します。同時に、過去のケースとしてどのファンドで当該項目を何点としたのかを理由とともに記録し、アナリスト間で共有します。

いずれのファンドも複数のアナリストで採点
評価結果にバイアスがかかることを防ぐために、複数のアナリストがそれぞれ採点します。点数に食い違いが生じた項目は、議論して意見統一を図った上で、アナリスト間で評価事例として共有します。

いずれの評価項目も全て等ウエイトで合計得点を算出
項目間でウエイトの格差をつける理由がないため、等ウエイトで合計得点を計算し合計得点に基づきレーティングを決定します。重要な事項に関しては、チェック項目が多くなるため、自動的にウエイトが高くなると考えます。

評価項目ごとの採点結果とその理由は評価システムに入力
同ファンドの時系列での評価結果の変化やファンド間での比較を容易に行うことができます。

全評価項目を定期的に見直し
後述する評価結果の有効性検証結果を踏まえ、評価項目を見直します。不足の項目があれば新設し、重複した項目があれば統合します。