ロボアドバイザー界にも“手数料ゼロ”の波

今のところ手数料0%はFidelityくらいだと思うのですが、ロボアドバイザー手数料ゼロというのもいくつか出ています。手数料ゼロというのは耳にやさしいのですが、果たしてこちらの落とし穴は?

一つは以前ご紹介したことのあるCharles Schwabの「Intelligent Portfolios」です※2。こちらはポートフォリオ構築から維持までずっと無料で行ってくれるロボアドバイザーです。そもそも低コストファンドをそろえているSchwabが無料ロボアドを出したというインパクトは大きく、そのマーケティング効果は絶大でした。2015年に導入されたばかりなのに順調に顧客を増やし、現在国内最大級のロボアドにのし上がり$66ビリオンを管理しています。Schwabよりずっと先にロボサービスを始めたBettermentは$27ビリオン強、Wealthfrontは$21ビリオンですから、その成長ぶりが推し量れます。ただしこのロボアドには大きな落とし穴があります。それは自動で作られるポートフォリオの中の現金比率が高いことです。

※2編集部注 「資産形成の先に待ち受けるもの―“資産の取り崩し”が圧倒的に難しいワケ」に掲載

たとえばの話ですが、リタイヤメントまで25年以上ある比較的若年層を前提にこのロボアドを利用した場合、振られる現金比率は10%以上という結果です。これは他ではなかなか見ない高い現金比率です。現金に振られた部分はSchwabにとってみればおいしい部分です。Schwabはその現金を運用して利子を得て、それよりずっと低い利子を顧客には配分しますから、その差はSchwabの利益となるわけです。Schwabにとってはロボアド手数料無料は単なる客引きツールであり、真の利ざやは現金確保にあるというわけです。顧客の側から考えた場合、このロボアドはできれば避けたほうがいいということになります。ある試算では、もしもこのロボアドが0.30%(アメリカでは平均的レベル)のロボアド料金を課したうえで、多すぎた現金割り振り分を投資に回していたらば、顧客は$531ミリオン相当を得ることができており、それは平均的に顧客の利回りを2%上げる計算だというからびっくりです。ロボアドが無料でも2%の利回りを失ったら元も子もありません。これは大きな落とし穴であり、昨今では問題が表面化してSEC(米国証券取引委員会)の調査、顧客からの集団訴訟に発展しています。

もう一つの無料ロボアドに、M1 Financeという会社があります。手数料無料で、自動で組んでくれるポートフォリオの中身はVanguardの低手数料ETFが中心というすぐれものです。ちょっと話がそれますが、ロボアドも「AIを使った自動投資」などといえば聞こえはいいですが、そのAIを考えさせるアルゴリズムを組むのは人間。そして人間には意図があります。今までも低手数料ロボアドはいろいろありましたが、手数料が低いけれど組むポートフォリオは一定の会社のファンドばかり、しかも何気に手数料の高いものが組み込まれている……というようなこともありました。こうなると、ロボアドは体の良いマーケティングツールになり下がります。なので、M1のように「無料」となると少し構えて中身を見てみることが必要ですが、中身をチェックしてみればすべて低手数料ETFというのは新鮮な発見なわけでした。

ではこのM1はどこで儲けているのか――。これは顧客にとっても大変大切な問題です。この情報を確認しなければ、意識しないまま囲い込まれたり、知らないうちに不効率なポートフォリオで利回りを犠牲にしていたりということになるからです。M1のすごいところは、その顧客の確認ニーズをちゃんと理解し、そのための情報開示をしているところです。「How M1 Makes Money(M1はどのように利益を上げているか)」と銘打ったWebページが用意され、なぜロボアドが無料でもビジネスとして成り立つのかが説明されています。簡単にいえば、M1はロボアドだけでなくパーソナルファイナンスのワンストップサイトとして、銘柄売買、証券貸付、マージン取引、ローン貸付、オンラインバンキング、クレジットカードを展開しており、その意味では無料ロボアドで顧客を取り入れ、他の商品をクロスセルしていく戦略です。顧客側から考えた場合、これらのクロスセルに出会ったとき、なあなあの態度で取り込まれることなく、不要・必要の別を吟味し、不要ならば“無料のロボアドだけを使わせてもらうのだ”というソフトな決意みたいなものが必要ということでしょうか。

私自身が個人投資家として金融商品を選ぶとき、またファイナンシャルプランナーとして多くのお客様の立場にたって考えるとき、①無料とかゼロといったキャッチフレーズに惑わされず、「その裏には何があるか」「企業はどう利益を出しているか」という面で相手を知ることと、②それは「自分にどのような価値を提供してくれるか」「自分は何を気を付けるべきか」という自分の立ち位置を確認すること、この二つが常に大切なように思います。