手数料0%ファンドに潜む落とし穴とは?

アメリカの場合、Fidelityが手数料0%のファンドを出しています。その名も「Fidelity ZERO」。このZEROは実はシリーズ名で、いくつか種類があります。米国大型株式インデックスファンド、米国中小型株式インデックスファンド、米国トータル株式インデックスファンド、米国外の外国株式インデックスファンドと4つ出ています。どれも有料バージョンがすでに存在し、それらのカウンターパートを無料バージョン=ZEROとして出しています。有料バージョンといっても、手数料は0.015%とか0.035%というすでにかなり低い数字なので、まあこれが0%になったところでそれほどの感動もないのですが、でもゼロはゼロなりの驚きはあります。

中身を見てみると、有料バージョンとZEROバージョンではあまり差がないのですが、あるとすれば後者では小型株よりもさらに極小株が切り捨てられていて、リスク分散が少し限られるということです。ただし切り捨てられた極小株は全部合わせても全体のほんの小さな部分でしかないため、この二つは大まかにはほぼ同じ成績の動きです。よって、もしも無料がゆえの落とし穴があるとすれば、犠牲となったこの極小株のリスク分散です。ただ、投資額が比較的小さければ、この極小株のリスク分散はほぼ気にならない部分だと思います(逆を言えば、投資額が小さければ、手数料0.015%がゼロになったところで、大した絶対額の差がないともいえますが)。

もう一つ落とし穴があるとすれば、これらのファンドはFidelityでしか取り扱われていないことです。広く普及しているインデックスファンドなら複数の会社で取り扱われていますから、金融機関の乗り換え時も換金せずそのまま移管できますが、ZEROをFidelityから他へ移そうとすればいったん換金が必要になります。この意味で、ZEROファンドは、手数料ゼロで顧客を取り込み、いったん取り込んだ顧客は囲い込んで永久化させるマーケティングツールともいえると思います。

顧客の側から考えた場合、とりあえず少額の投資を手っ取り早く始めたい人にはベストのツールですが、すでにまとまった額があっていくつかの運用口座を持っており、将来的にファンドの整理・移管など念頭においたフレキシブルな管理がしたい人には、たとえ無料でも避けたほうがいい商品かと思います。