長期にわたる資産形成を成功させるには、その伴走者となってくれるアドバイザーの存在が重要になります。では、金融機関はそうしたアドバイザーの役割を果たせているのか? 必ずしもそうではない実態が、金融庁が2021年6月に公表した「リスク性金融商品販売に係る顧客意識調査結果」から見えてきました。『Finasee(フィナシー)』を運営する想研の専務取締役である菊池裕が、そのポイントを解説します。

※この記事は、2021年11月に実施したフィナシー・資産づくりセミナー「金融庁の調査から見えてきた金融機関選択と資産運用行動の課題」をダイジェストにして記事化したものです。

顧客のニーズに応えられていない金融機関

――なぜこの調査を取り上げたのでしょう?

ここ数年、金融行政が掲げてきたキーワードは「顧客本位」ですが、残念ながら金融業界では、お客さまのために商売をすることが当たり前になっていないという問題意識がその背景にあります。この調査結果を通して、資産運用を行う上での課題や金融機関の選択のポイントを読み取れるため、このセミナーで取り上げることにしました。

――調査の概要を教えてください。

全国の成人、約1万人を対象としたインターネット調査で、回答者は投資経験者6割、未経験者4割の構成です。金融庁としては、金融機関の奥にいるユーザーの声を直接拾い上げ、金融行政や金融機関との対話に活かすことを目指したのでしょう。

この調査結果の中で、特に2つのトピックに注目しました。1つ目は金融機関が顧客のニーズに応えられていない点、2つ目はフォローアップの重要性です。

顧客のニーズを知るための質問としては、「リスク性金融商品の購入にあたって、金融機関からどのような提案を受けたいと思いますか」があります。1位は「提案を受けたい内容はない」でしたが、「ライフプランに沿った中長期の資産形成に関する提案」が2番目に多い結果となりました。

ライフプランとは、これからの人生で発生するさまざまなイベント(結婚、就職、住居購入等)や趣味、今後の生き方などを踏まえてお金がいくらかかるのか、足りるのか、不足するのかを確認して対応を図ること。10年前と比べても、平均寿命は2年ほど延び、定年も延長されるなどもはやモデルケースというものが存在しないため、人それぞれのライフプランが必要になってきているということが、この順位に表れていると思います。

――それぞれのライフプランに沿った提案が求められているわけですね。実際にそうしたニーズは満たされているのでしょうか?

今回の調査では、「リスク性金融商品を購入する際、メインで利用している金融機関から次のような説明や確認がありましたか」という質問に対して、いくつかの選択肢が提示されています。その中で、「あなたの人生設計や将来の資金需要についての指摘・アドバイス」を選択した方はわずか5.8%と最少でした。つまり、顧客のニーズと金融機関の対応に大きなずれがあると言えるでしょう。

結果として、「リスク性金融商品の購入にあたって、メインで利用している金融機関はあなたのニーズに合った金融商品を提案していると感じましたか」という質問に対しても、「十分に感じている」との回答はわずか6%にとどまっています。