介護施設の利用に罪悪感を持つ必要はない

二宮氏が母の介護で学び、父の介護で活かした最大の教訓は、親の介護を自らの手でやらなければならないという思いを上手く手放すことだ。

「自分が頑張れるまで、親の介護を自らしてあげたいと思う人は多いと思います。母を介護した当時の私もそうでした。しかし今では『仕事を辞めてまで』『自分や配偶者、子供などをないがしろにしてまで』するべきことなのか、よく考えたほうがいいと思っています」

介護離職には収入がなくなってしまうのはもちろんのこと、介護が終わったあとに復職したいと思っても、キャリアが分断されて再就職しにくくなる可能性もある。

「もちろん、介護する本人が納得しているならば親の世話のために離職するのも一つの手です。問題なのは『介護保険を活用して介護施設を使用し、仕事を続けながら親の面倒を見る』といった選択肢を知らないまま、自らの手で介護をする道に突き進んでしまうことなのです」

二宮氏は事前に選択肢を知り、親の介護に突然直面しても迷わないよう、介護の方針について親と事前に話し合っておく重要性を強調。例えば介護施設を利用するか否かの判断に関しては「トイレが一人でできなくなったら」「認知症になったら」などの線引きを、相談して明確化しておくことが必要だと語った。

「介護保険を受けて介護施設などを利用することに親への罪悪感を抱いてしまうこともあるかと思います。しかし、介護とは社会全体で協力して行うもの。子育てと同じです。幼稚園や保育園に子どもを預けて仕事を続けるように、介護でも施設などのサービスを利用するのは不自然なことじゃないと考えるべきです。罪悪感を持つ必要はありません。親の介護と自分や家族の生活を両立させることが大切です」

 

取材・文/藤田陽司(ペロンパワークス)