将来的に国民の約2.6人に1人が65歳以上の高齢者になると言われている。その「高齢化」の影響を実生活で初めて受けるのが、介護や看取り、相続といった“親のこと”という人は多い。そして、そうした“親のこと”は、突然起きがちで、往々にしてお金の問題がついてまわり、子である本人の資産形成に大きな影響を及ぼすことも。

突然のことに狼狽しないよう大切なのは、親に「万が一」が起きてしまう前に、親とお金の話をすることだと言われている。「しかし、親と“親のお金”のことを話すって何を? どうやって?」と困惑する人も多いだろう。

介護離職した経験を持つファイナンシャルプランナーの二宮清子氏に、前編「父の貯金は尽きかけ、家族はないがしろに…“献身的な介護”が招く不幸せな事態」で、教職を辞して、母親につきっきりの介護をした経験について語ってもらった。

2度目の介護となった父親の介護では、1度目の介護の教訓を活かせたという。それはどんな内容なのか――。

●前編はこちら

リーフ代表
ファイナンシャルプランナー(AFP)
二宮清子氏

 

地元宮崎県の中学・高等学校にて家庭科教師として勤務。母親の介護にあたって離職後、AFP資格を取得。独立系ファイナンシャルプランナー会社「リーフ」を立ち上げ、家計診断やキャッシュフロー分析、ライフプランの作成などを幅広く手掛ける。雑誌や地方新聞での取材記事・コラムの執筆も多数。

 

教訓を生かし、介護サービスを利用

母親が亡くなって数年後、今度は父親の介護にも向き合うこととなった。二宮氏は当時、AFP資格を取得してファイナンシャルプランナーとして独立し、新たなキャリアを歩み始めていた。母の介護での経験、そしてファイナンシャルプランナーとしての活動で得た介護サービスや家計管理の知識を生かし、父との話し合いを始めた。まず二宮氏が取り組んだのは、父親の収支の確認だ。

「家計からの支出をなるべく少なくするためにも、施設の入所費用は父の年金額の範囲で収めることにしました。父の年金手帳を見せてもらったところ、もらえる年金額は1ヵ月あたりおよそ18万円程度。おむつなどの消耗品や、今後、症状が悪化した場合の入院費用も考慮して、介護施設の入居費は12〜13万円程度と決めました」(二宮氏、以下同)

ただ、最初から介護施設を利用したわけではない。病状が軽かった当初は自宅での介護を選んだという。

二宮氏が父の在宅介護にあたって利用したのは、訪問介護や短期的に介護施設に入所するショートステイサービス。しかし、介護保険制度の適用となるこれらのサービスには週に2〜3回程度の利用限度があった。残りの日は保険適用外の訪問看護サービスも複合的に利用したという。

「認定された要介護度によって、介護保険が適用されるサービスの内容や、その利用回数は異なります。介護サービスの利用にあたっては、何よりもまず要介護認定を受けて、それぞれの介護事情に応じたケアプランを作成することが大切だと考えました」

諸々の手続きは、各市町村が設置している地域包括支援センターや社会福祉協議会を窓口として行うことができる。

また、要介護認定には数ヵ月の待機期間が発生する。その間は介護ベッドや車椅子の利用などをはじめとした、介護に必要なあらゆる出費に対して介護保険を利用することができない。二宮氏は「自己負担となる出費を避けるためにも、早期の申請が必要」と強調する。