「老後の備えは自分で作らなくてはいけない」そんな危機感がコロナ禍でさらに膨らみ、投資を始める人が増えている。しかし、そうはいっても奥深いのが投資の世界。慣れれば慣れるほど疑問や不測の事態に直面することも増えてくる。
そこで、この連載では「資産形成3年目だからこそ知りたい」用語や投資情報を解説。第1回は「NISAの出口戦略」について、非課税期間終了時に考えたいことをあげていく。
非課税期間が終わるときの選択肢は3つ
株式や投資信託など、金融商品で得た運用益が一定期間非課税となるNISA(少額投資非課税制度)。おさらいとはなるが、とくに一般NISAでは毎年の非課税投資枠が120万円、購入した年から5年間が非課税期間に設定されている。
例えば2017年に一般NISA口座で購入した120万円分の金融商品については、2021年いっぱいまで、2018年に購入した金融商品は2022年まで運用益が非課税となるわけだ。
では、非課税期間の終わりを迎えても“ほったらかし”でいいかというと、そうではない。利用者は次の3つのうちいずれかの行動を取ることになる。
①翌年の非課税投資枠に移す(ロールオーバー)
②課税口座に移す
③売却する
なお、これらは2023年に新規投資期間が終了するジュニアNISAでも同様だ。
それぞれについて詳しく解説していこう。
①翌年の非課税投資枠に移す(ロールオーバー)
ロールオーバーとは非課税期間が終了した金融資産を、翌年の非課税投資枠に移し替える方法だ。ロールオーバーした分についてはさらに5年間、非課税での運用を続けることができる。
とくに2017〜19年に一般NISAを利用しており、これからロールオーバーを検討している人は最大で15年間、運用を継続できる。例えば2019年の投資分については2023年に1回、2028年にもう1回ロールオーバーが可能。優良銘柄を長期にわたって、なおかつ非課税で運用することができるのだ。なお、2028年時点のロールオーバーは、後述の新NISAを利用することとなる。
また、ロールオーバーには上限額がない。5年間の運用により資産評価額が120万円を超えていたとしても、全額を翌年の非課税投資枠に移し替えることができる。ただし、その場合は年間の投資枠を使い切ることになり、新規購入ができなくなるので注意。ロールオーバーする額が120万円以下なら、余った枠を利用して金融商品を購入することも可能だ。
ロールオーバーの申請はNISA口座を開設している金融機関のWebページから申し込むか、あるいは金融機関から送付される書類を返送する必要がある。
②課税口座に移す
ロールオーバーを選ばない場合、NISAで保有していた金融資産は同じ金融機関の課税口座へ自動的に移管される。当然ではあるが、保有している金融資産の配当金や売却益は以降、課税対象となってしまう。
なお、税額の計算は購入価格ではなく、移管時の時価を基準に計算される。
仮に120万円で取得した株式がNISA口座から課税口座への移管時に130万円まで値上がりしており、さらに140万円に上がったところで売却した場合、課税対象となる売却益は……
140万円(売却時の時価)-120万円(取得額)=20万円
ではなく、
140万円(売却時の時価)-130万円(移管時の時価)=10万円
となる。
③売却する
含み益が出ているなら売却をして利益を確定させるのも手だ。その場合、非課税期間中に行うよう心がけたい。前述の通り、非課税期間終了後は自動的に課税口座に移管されてしまうため、売却益は課税対象となってしまうので注意しよう。
また、含み益が出ている商品だけを売却し、今後も値上がりが見込める商品についてはロールオーバーをして運用を続ける方法もある。