ロールオーバーの注意点

ロールオーバーにはいくつかの注意点もある。まず、手続き期限が決まっていること。期限は金融機関毎に定められており、これを過ぎると自動的に課税口座へ移管されてしまう。

また、ロールオーバーは同一の金融機関で行うことが前提となっている。証券会社Aで開設しているNISA口座から、証券会社Bに新規開設したNISA口座への移動はできない。もしリアルバンクからネット証券へロールオーバーを考えている場合は、非課税期間中に金融機関変更の手続きをする必要がある。

なお、今日現在(2021年12月17日)すでに2017年買付分のロールオーバー申し込み受付を終了した金融機関も、まだ受付中の金融機関もある模様。自身の資産を預ける金融機関が、いつ頃ロールオーバー申し込みを締め切るかを、毎年秋口にはチェックする習慣も身に付けておきたい。

さらに、一般NISAからつみたてNISAへのロールオーバーも不可だ。ただし、非課税期間終了のタイミングで成人になる場合など、ジュニアNISAから一般NISAへのロールオーバーは可能となっている。

新NISAへのロールオーバーは一部商品が対象外

一般NISAは2024年から衣替えし、新制度が始まる。現行制度で運用している商品を新NISAの投資枠へロールオーバーすることは可能だが、その場合にもいくつか注意したいポイントがある。

新NISAの変更点を簡単に説明すると、全体の投資枠がつみたてNISA対象商品にしか投資できない1階部分と、株式などにも投資できる2階部分に分かれる。1階、2階それぞれの投資枠は20万円、102万円の計122万円で、原則として1階部分を利用しないと2階部分の投資枠を使うことができない。

例外として現行NISAの利用者や株式投資経験者は2階部分から使うこともできるが、その場合は上場株式にしか投資できなくなる。また、上場廃止しそうな株式や、高レバレッジ投資信託が制度の対象から外される。

では、これらの変更が現行NISAから新NISAへのロールオーバーに対して、どのように影響を与えるかというと、まず制度対象外の商品についてはロールオーバーができなくなる。現行NISAで高レバレッジ投資信託を保有していても、新NISAへ引き継ぐことはできない。もし該当商品を保有している場合は、売却か課税口座への移管を検討しよう。

現行NISA同様、投資上限額である122万円を超える額についても、すべての枠を使い切ることで全額ロールオーバー可能だ。気をつけたいのはロールオーバーの額が122万円未満の場合。新NISAのロールオーバーは2階部分から埋まっていくため、例えば112万円しかロールオーバーしなかった場合、2階部分ではなく1階部分の枠が10万円分残る。

売却するかしないか、ロールオーバーすべきか課税口座でいいのか等、保有商品の動向を見定めるには普段から市場や企業を観察しておく必要がある。5年の非課税期間終了を今年迎える人も、さらに来年に控えている人も、資産は“放置”するのではなく定期的に向き合うようにしたい。

 

文/笠木渉太(ペロンパワークス)