定岡さんが失敗した原因
定岡さんがラーメン店の開業に失敗した要因は、以下の通りです。
自分でリサーチしていない
一番の問題は、定岡さん自身に知識や経験が不足する中、まったくリサーチしなかったことです。
たとえばコンサル業者と契約するときにも、対象業者の評判や価格など他社と比較していません。お店の立地や内装の選択についても、コンサル業者にいわれるがままです。
肝心のラーメンの味についても他店の味と比べて研究などせず、自己流のものを提供しただけです。何のリサーチもせずに飲食店が成功するはずがありません。
客目線に立っていない
定岡さんは「自分がラーメン大好き」という自己都合だけでお店を開業しており、客目線に立っていません。
どのようなメニューが要望されているか、店主としてどういった接客をすべきかなど、考えたこともありませんでした。サラリーマン時代はそういったことは別の部署の人がやってくれたので、自分で対応する必要がなかったためです。
しかし事業を行うならサラリーマン気質から離れて、自分が客目線に立って対応しなければなりません。日々試行錯誤を繰り返す必要があります。
リスクを取りすぎている
定岡さんは、一気に高額なコンサル料を払い、いわれるままに高額な物件を借りて退職金を全額失い、さらに運転資金のために借金までしてしまいました。これではリスクを取りすぎています。
高齢になると高額な収入を得るのは難しくなり、若者のように「巻き返し」はできません。
シニア起業を成功させたいなら、リスクは最小限にとどめるべきです。
シニア起業に潜むリスク「コンサル業者」の実態は?
シニア起業では、悪質コンサル業者にも注意が必要です。定年退職後の起業に夢を抱くシニアの「退職金」を狙うコンサル業者が多く存在するからです。
たとえば定岡さんについたコンサル業者も、一般的なコンサル費用と比べて相当高額(500万円)です(一般的には150~300万円程度といわれています)。
また「コンサルがつけば客足が伸びる、コストも抑えられる」などと甘い言葉をかけて、実際にはあまり何もしてくれない業者も少なくありません。定岡さんのケースのように、開業当初にだけちょっとしたアドバイスを行い、あとは放置されるケースも多々あります。
開業コンサル業者と契約するときには、評判や実績、費用の確認や他業者との比較が必須です。いつまでどのようなサポートをしてくれるのか、保証はあるのかなど、契約内容も事前にしっかり確認しましょう。
いったん契約すると、後から「詐欺」などといっても通用しないケースが多数です。くれぐれも「なんとなく頼りになりそうだから」などといった主観的な「気分」で契約しないように注意してください。
定年退職後の起業に成功する人はもちろんいます。成功している方は業種選び、市場の需給リサーチ、客の好み、土地柄、費用、考えられるリスクなど、しっかり自分でリサーチして慎重に行動しています。大切な退職金を使うのですから「自分が経営者になる」という自覚、ビジネス感覚をもって対応しましょう。