こんなにも顧客の運用成績に差が出る金融事業者ごとの実態
ちなみにニッセイ基礎研究所の「研究員の眼」によると、「この調査結果は例年、その年度の外国REIT(投信)のパフォーマンスに左右される傾向がある」としたうえで「2021年3月末時点の投信の運用状況は外国REITの価格が急上昇したことが寄与したと思われる」と考察。いずれにしても2021年3月末にかけて、株価やREITの相場が回復したことが、投資信託の運用状況を大きく改善させました。
では、金融事業者別に運用損益別顧客比率を見てみましょう。運用損益が0%以上の顧客比率が高い順に並べると、以下のようになります。
投資運用事業者・・・・・・99%
その他・・・・・・92%
協同組織金融機関等・・・・・・89%
主要行等・・・・・・84%
地域銀行・・・・・・83%
証券会社・・・・・・79%
投資運用事業者とは投資信託会社と同義であると考えてもらって良いでしょう。その他には保険会社1社、IFA7社、そして日本郵便が含まれています。もちろん、この数字を見ただけで、「投資運用事業者で投資信託を買うと儲かるけれども、証券会社で買うと儲かりにくい」と考えるのは早計です。
研究員の眼では、「単純平均で金融事業者別でみると、運用損益比率が0%以上の顧客割合が低い金融事業者の中で証券会社が確かに多いのは確かである。しかし、そのような証券会社のほとんどが中小の証券会社であった」と指摘しています。
運用損益比率が0%以上の顧客割合を低い順に挙げていくと、西日本ティTT証券、中銀証券、FFG証券、岡三証券、八十二証券、北洋証券、むさし証券がそれぞれ81%、ワイエム証券、いちよし証券、東海東京証券、大和証券、あかつき証券がそれぞれ82%でした。このうち大和証券の顧客数は決して少なくありませんが、他の証券会社は経営規模もそれほど大きくなく、したがって相対的に見れば顧客数はそれほど多くありません。
対して、運用損益比率が0%以上の顧客割合が上位の証券会社を見ると、楽天証券では95%、SBI証券では94%、丸三証券では93%、野村證券では92%の顧客の運用損益が0%以上で、口座数では楽天証券が508万口座、SBI証券が681万口座、野村證券が532万口座というように、この3証券会社が圧倒的な数字を持っています(口座数は2021年3月末現在 MONEY TIMES調べ)。
もちろん多くの投資家は複数口座を持ちますし、この口座すべてが投資信託を購入しているわけではありませんが、口座数が他を圧倒するほど多い証券会社ほど、運用損益比率で0%以上の顧客割合が上位にきているということは、証券会社全体の顧客数で考えると、利益を得ている顧客の割合は、実質的に79%よりも多い可能性があります。したがって、ここに出ている数字を額面通りに受け取らず、多少割り引いてみる必要はあるのかも知れません。
では、この数値を公開することによって、金融庁は個人に対して何を伝えたいのでしょうか。