ニッセイ基礎研究所が定期的に発表している「研究員の眼」(11月12日)で、投資信託の運用成績に関する一考察が書かれています。

このレポートは、11月10日に金融庁が公表した「投資信託の共通KPIに関する分析について」がベースになっています。こちらの資料も金融庁のホームページから簡単に閲覧できます。最近は、つみたてNISAやiDeCo(個人型確定拠出年金)といった非課税投資制度の枠組みを利用して投資信託を購入している個人も増えているので、実際に全体の運用パフォーマンスがどうなっているのかを把握するうえでも、この手のレポートには目を通しておくと良いでしょう。

コロナショック後に堅調だった株価が投信の運用成績を下支え

金融庁の分析結果でもっとも注目すべきことは、「2021年3月末基準による投資信託の運用損益別顧客比率」です。この数字が何を意味するのかというと、調査対象である186の金融事業者の単純平均で、運用損益が0%以上になっている割合が、2021年3月末時点でどれだけあるのかを示しています。

当然、この数字が高いほど、その金融事業者で投資信託を購入した顧客は利益を得ているか、損をしていない状態にあるということになります。

では、2021年3月末基準の数字はどうだったのかというと、全事業者平均で83%の顧客の運用損益が0%以上という結果になりました。ちなみにその1年前である2020年3月末基準では、全事業者平均で運用損益が0%以上だった顧客比率は、たったの29%でした。29%から83%ですから、大幅に改善しています。

そうなった一番の理由はコロナショックです。新型コロナウイルスの感染拡大によって世界中で人の移動が止まり、経済活動は大幅な停滞を余儀なくされ、それを映して株価が大きく下落しました。結果、2020年3月末基準では投資信託の運用損益が0%以上の顧客比率が大幅に減少したのです。

しかし株価はその後、比較的堅調に推移しました。米国では過去最高値の更新が続き、日本でも2021年3月末にかけて日経平均株価は3万円を回復2020年3月末から2021年3月末までの1年間で、日経平均株価は実に54%も上昇しました。これだけ株価が上昇すれば、当然のことですが投資信託の運用パフォーマンスも大幅に改善するはずです。