長期保有する投資信託の優位性をアピール
あくまでも憶測ですが、投資運用事業者の顧客のうち、99%の運用損益が0%以上だったことは、金融庁にとって非常に喜ばしい結果だったでしょう。なぜなら、「直販を通じて長期保有を勧めている投資信託会社のお客さまの大半が損益0%以上なのだから、やはり投資信託は長期保有する方が有利になる」ことをアピールできるからです。
逆に証券会社の場合、全事業者平均の83%をも下回る79%の顧客しか損益0%以上でなかったので、「証券会社は投資信託の回転売買を行うからダメなんだ」と、暗に言いたいのかも知れません。ただ、投資信託を長期保有すれば、受益者の運用パフォーマンスが改善するのかというと、一概にそうとも言えません。確かに、回転売買をしなければ何度も投資信託の購入手数料を払わずに済みますから、その手数料分だけ運用パフォーマンスは改善するのは事実です。
でも、いくら長期保有したとしても、その投資信託の運用スタイルが積極的に組入銘柄の入れ替えを行うものだったら、どうなるでしょうか。そう、自分自身は長期保有しているつもりでも、実際の運用は短期売買をしているのと何ら変わらないのです。投資信託という仕組みを通じて長期投資を実践したいのであれば、「一度組み入れた銘柄はそう簡単に入れ替えない」というくらいに組入銘柄の長期保有にこだわった投資信託を探し出す必要があります。
どれだけ組入銘柄を長期保有しているのかについては、投資信託の運用報告書に記載されている「売買高比率」が参考になります。売買高比率は、一定期間中における組入資産の売買金額合計を、同期間中における投資信託の平均純資産総額で割って求められる数字です。この数字が高ければ高いほど、その投資信託は積極的に組入銘柄の入れ替えを行っていることになります。
ちなみに投資運用事業者のなかで、損失を被っている顧客が1人もいない鎌倉投信が運用している「結い2101」の売買高比率は、0.79と極めて低い水準にあります。逆に、この数字が3や4に上昇しているような投資信託は短期売買志向が強いので、長期投資による効果を期待して投資信託を購入するのであれば、避けた方が無難です。