私財の1億円を投じる、クラウドファンディング…お金の面でも話題が尽きない!
さて、お金という面からも「BE:FIRST」を見てみましょう。
まず1つは、BMSGを立ち上げ、オーディションを決行するにあたり、SKY-HI氏自身が“自腹で”1億円を投じたことが大きな話題に。
この1億円はおそらく自身の芸能活動で得た収入を貯蓄してきた部分も大きいのだろうと想像されます。芸能人は一般的に私たち勤め人よりも多くのお金が入ってくると言われています。でも、一方で芸能人は何かと物入り。それゆえに、勤め人と同じくらい、ひょっとすると時にはそれ以上に収支のコントロールが必要だった可能性もあるでしょう。それでも1億円の私財を築けたのは、強い思いとビジョンがあったからではないかと想像します。
そしてこの強い思いとビジョンとは、BMSGサイトのメッセージを読んだ私の推測の域を出ませんが、SKY-HI氏が自身の芸能生活において、多くの才能が正当に評価されないまま、あるいはアーティシズムと異なる部分で消費されていくのを見てきた経験が大きな動機になっているのではないかと思います。
また、もう1つお金にまつわる話で欠かせないのはクラウドファンディングでしょう。『The Fisrt』出身アーティストの育成・制作費のための資金、1億円の調達をわずか35分で達成したことは、ネットニュースでも大きく取り上げられるなど耳目を集めました。
音楽業界ではCD・DVD・配信の売り上げや印税、ライブの興行収入、グッズ販売で収益を得るのが一般的。つまり利益、もっと言えばお金の“入り”は後、というのが通常です。一方クラウドファンディングは、活動に必要なお金を“先に”調達している点で大きく異なります。
クラウドファンディングというスタイルを選んだことに対し、SKI-HI氏はこう述べています。
「正直、”クラウドファンディング”という名称を使わずにグッズの作成などで利益を出す方が芸能事務所としては美しく見えるのかもしれません。自分も悩みました。
しかし、嘘、演出、台本、政治の一切を排除して作成し、放送したからこそTHE FIRSTは反響をいただけたのだと思いますし、取り繕ったりせずに素直に皆様にお願いをすることの方が自分らしい、BMSGとして正しいと思いました。
逆に、上がったバリューを使い大手事務所と提携したり、資金源を大きな会社に頼ることで決定権を委ねてしまうことは、BMSGとして正しくないと判断しました」
(引用元:クラウドファンディング「うぶごえ THE FIRSTから羽ばたく皆にもう一億円をかけたい!」プロジェクトより一部抜粋)
特に、「資金源を大きな会社に頼ること=決定権を委ねる」という箇所はお金の本質をついているように思います。
SKY-HI氏の言う、「資金源を大きな会社に頼る」は、必ずしも株式取得だけを意味しているわけではなく、もっと広義だと思われますが、ここでは分かりやすい例として、株式を例にとって考えてみます。
その会社や事業の将来性・成長にかけて、投資をするとその投資額に合わせ、株式を所有できます=株主となります。株主になることは、その会社のオーナーの1人になることでもあります。同時にオーナーの1人として、いろいろな権利が与えられますが、代表的なものに議決権があり※、当然多く出資し、多くの株式を所有する株主の権限は強くなります。議決権のある株式の過半数を持つ株主は取締役の選任ができますし、議決権のある株式の2/3を持つ株主は、特別決議の成立ができます。
※厳密には議決権の制限を持たせた“種類株式”という株式もあります。
株式の例で説明しましたが、あえて、ざっくりと言うならば、投資(出資)すればするほど会社の経営に関わることができる、ということです。
SKY-HI氏のメッセ―ジからは、それを避けたかったことが読み解けます。同じく「うぶごえ THE FIRSTから羽ばたく皆にもう一億円をかけたい!」の「このプロジェクトで実現したいこと」内には、「既に世に出る準備の出来ている才能達を、大きな会社の資本をいれず、純度を失うことのないまま最高の形で世の中に送り出していくこと」という言葉もあります。
これも筆者の推測で恐縮ですが、今はSKY-HI氏に権限を集約させる形でBMSGのビジョンを実現したいのだという強い思いがあると想像します。BMSGの仕掛けは「お金」の面でも、多くの示唆に富んでいると思います。
さて、冒頭でもお伝えした通り、今日はボーイズグループ「BE:FIRST」がメジャーデビューする日。“唯一無二のShow Time(プレデビュー曲『Shining One』に出てくるフレーズです)”をこれからもっと見せてくれるに違いありません。
まずは、CDショップで『Gifted.』を手に取ってみたいと思います。
執筆/平 陽子
投資歴7年。投信積立での運用を中心に据えつつ、日本株の投資も。特に「株主優待は生活の潤い」をモットーに、割安で優待の充実した銘柄を探し、投資。そして、到着した優待品をSNSやブログで公開することをライフワークにしている。