ファンドマネジャーの実力? それとも資産配分?
このような資産配分を考慮した資産運用を、自分自身で行うのは手間がかかります。「こんなことを自分でやるのは無理だ」という人にとって有効なツールになるのが、バランス型投信と呼ばれるもので、投信の中で大きなカテゴリーになっています。
このバランス型投信を選ぶ際、多くの人は各バランス型投信の実績リターンを見て、「このバランス型投信はリターンが良いし、ファンドマネジャーがうまいに違いない」「株式暴落時にもこの投信は下落幅が抑制されているし、この投信のファンドマネジャーは優秀に違いない」といった感じで選んでいませんか。でも、実績リターンのみではその投信が優秀かどうかは分かりません。なぜなら上述の通り、その投信のリターンの出方はファンドマネジャーの能力というよりも、そもそもの資産配分がどうなのかで大半が決まってしまうからです。
上述の論文では、バランス型投信のリターン格差が何で説明できるのかについても分析していますが、結果はその格差のうち約70%は資産配分が説明しているとなっています。逆に言えば、ファンドマネジャーの能力は30%程度しか格差を説明していないのです。
ここからの示唆は何でしょうか? それはバランス型投信を選ぶ際に、まず確認しなければいけないのは資産配分だということ。株式が多い投信なのか、“半々”なのか、それとも債券中心の投信なのか……。横比較をするのであれば、資産配分が近い者同士を比較する必要があります。
このように、いきなり投信を比較するのではなく、まず資産配分を考慮することで、高いリターンの要因がその投信が当初定めた資産配分によるものなのか、ファンドマネジャーの実力なのかがはっきりし、バランス型投信を正しく選ぶことができるようになるのです。
今回は2つの観点から資産配分の重要性について説明しました。株高が続いていると、資産配分なんて考えたことがないという人が増えていると思います。このような人は、資産配分を考慮することで、リスク管理や投信選びが改善します。投資の意思決定プロセスの中に、ぜひ組み込んでみてはいかがでしょうか。