「労働経済の分析(労働経済白書)」とは

「労働経済の分析(労働経済白書)」は、一般経済や雇用、労働時間などの現状や課題について、統計データを活用して分析する報告書で、厚生労働省が公表しています。

今回で72回目となりますが、令和2年度は、新型コロナウイルス感染症が労働経済に大きな影響を与えたこともあり作成を見送ったため、2021年7月に公表された令和3年度版では、2019年と2020年の2年間を対象に分析が行われています。

一部の業種に大きな落ち込みも…2019年・2020年の経済と雇用の状況

2019年半ばまでは堅調に推移していた日本経済は、その後第4四半期(10-12月期)には消費税率の引き上げに伴う駆け込み需要の反動減や大型台風の影響等により、5四半期ぶりのマイナス成長となりました。

2020年に入ると、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により個人消費や輸出が落ち込み、第2四半期(4-6月期)にはマイナス成長に。その後、個人消費や輸出が持ち直してプラスに転じたものの、2020年平均ではリーマンショック期の2009年の次に大きなマイナス成長となりました。

業種別の経常利益では、「運輸業、郵便業」「宿泊業、飲食サービス業」「生活関連サービス、娯楽業」での落ち込みが特に目立ちました。

非製造業における経常利益の推移/新型コロナウイルス感染症の感染拡大期

 

(参考)リーマンショック期

 

有効求人倍率は2019年が1.60倍から2020年には年平均で1.18倍へと大幅に低下しました。完全失業率は2019年の2.4%から2020年には2.8%に上昇し、厳しい状況となっています。 統計では、2020年には非自発的な理由で男女ともに幅広い年齢層で完全失業率の上昇が見られるとともに、幅広い年代の女性で非労働力化の傾向が見られました。

ここで注目したいのは、非労働力人口は失業率の計算に含まれない点です。15歳以上で収入を伴う仕事をしていない人のうち、求職活動をしていない、働く意思のない人口を非労働力人口といいますから、数字で見える完全失業率以上に、働くことをあきらめた人が大勢いること、特に女性にその傾向が多く見られることが分かりました。

コロナ禍で給与が大幅に減少した業種や人々

「給与」についても見てみましょう。リーマンショックの時には、2009年6月に製造業が13.9%減という落ち込みを見せましたが、今回のコロナ禍では、2020年3月以降、ほぼ全ての産業で給与が減少し、特に、「宿泊業、飲食サービス業」で12月に12.5%減、「運輸業、郵便業」で6月に10.7%減、「生活関連サービス業、娯楽業」で12月に9.7%減となりました。

産業別にみた現金給与総額の推移/新型コロナウイルス感染症の感染拡大期

 

(参考)リーマンショック期

 

2020年には女性の正規雇用労働者が増加しましたが、非正規労働者は男性、女性ともに減少し、特に女性の減少が目立ちました。

産業別に見ると、女性では「宿泊業,飲食サービス業」「製造業」「卸売業,小売業」「生活関連サービス業,娯楽業」、男性では「製造業」で、非正規労働者の雇用が減少しました。なお、リーマンショックの時には、製造業で雇用されている男性の正規労働者・非正規労働者が減少したのと、違いが見られます。

2020年に仕事を失った非正規雇用労働者の属性は、男性の「世帯主」・女性の「世帯主の配偶者」・男女の「未婚の子」等でした。一方で、男女の「単身世帯」、女性の「世帯主の配偶者」等を中心に正規労働者が増えたものの、2020年後半には男女の未婚の子、男性の世帯主で正規労働者が減少しました。