値上げが続く油 物価上昇への対応策
生活必需品ともいえる食用油ですが、2021年に入り値上がりが続いています。日清オイリオグループは4月・6月に続き8月にも値上げを行い、J₋オイルミルズも8月納入分から値上げを行いました。
主な理由は原材料の高騰です。植物油はさまざまな原料で作られますが、日本はそのほぼ全てを輸入に頼っています。ナタネなど主要な原料の国際価格が高騰し原価が上昇したことから値上げに踏み切りました。
油は多くの食品に使われるため、値上げの影響はさまざまな品目に影響します。お弁当やパンなど、油を使う商品は特に物価上昇の可能性が高そうです。家計収支の悪化が懸念されますね。
物価の上昇は家計収支だけでなく、資産形成にも悪影響を与えます。物価上昇で「お金の実質的な価値」が下落するためです。例えば年率2%の物価上昇が起こると、現在100円のものは10年後に約121.9円になっています。1万円で100個買えていたはずが約82個しか買えなくなってしまいました。これはお金の「モノを買う機能」が弱くなり、お金そのものの価値が実質的に下がってしまったことを意味しています。
これまで物価は長期的に上昇してきました。2020年の消費者物価総合指数は101.8ですが、1970年では31.5でした。50年間で約3.2倍、年に約2.4%ずつ上昇してきた計算です。現実には先述した例より高い率で物価上昇が起こっていることがわかります。
【物価の推移】
1970年:31.5(47.1)
1980年:74.5(93.9)
1990年:91.2(103.4)
2000年:99.1(104.4)
2010年:96.5(98.6)
2020年:101.8 (100.3)
※2015年基準消費者物価指数(全国)
※カッコ内は「油脂・調味料」物価指数
物価上昇による家計の悪化は、物価上昇率以上にお金を増やすことで解決できます。しかし日本は歴史的な低金利で、銀行に預けるだけではなかなか増えません。
現実的な手段はリスクを取った、投資による資産運用となるでしょう。例えば先進国の株式(円建てMSCIコクサイ)は1994年5月末から2021年7月末まで年率約9.9%上昇しました。リスクはありますが、資産運用で物価上昇に備えてみてはいかがでしょうか。
執筆/若山卓也(わかやまFPサービス)
証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。
AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。