米国の資格事情と、資格以上に大切なもの

——米国ではお金に関する資格も日本と異なると思いますが、どのような資格を取得されましたか?

CPA(公認会計士)と、その中でも個人の家計に特化したPFS(パーソナル・ファイナンシャル・スペシャリスト)を取得しました。

ちなみにPFSは個人の会計に関する資格ですが、その大元であるCPAは米国の会計制度に基づいて企業会計を取り扱います。両方取得してみて、やはり自分には人間の生きる場を扱う個人に特化した仕事が合っていると再認識しました。

——そうした資格を取ることは米国において、お客様から信頼される要素となっているのでしょうか?

資格は「専門的な知識を持っています」というアピールにはなると思いますが、個人的にはそれが仕事に大きく影響しているようには感じません。

私は個人向けファイナンシャル・プランニングの情報を提供するサイトを運営しているのですが、サイトを見て依頼してくださるお客様が多いです。そして、日本語を話す米国在住向けのサービスに特化しているところが、選ばれる理由だと考えています。

結局はその人の人柄や得意とする分野を、どうやって周りに知ってもらうかが仕事を依頼してもらうために大切な要素だと思いますね。

個人の家計に寄り添う、中立的な提案がモットー

——米国では一般的に、どのようなかたちで活動をしているFPが多いのでしょうか。

日本と同様、米国でもFPを名乗って仕事をするのに特別な資格は必要ありません。

仕事のあり方も多様で、投資・保険商品などを売って手数料をもらう「コミッション型」を取る人もいれば、投資マネジメントを引き受けて投資総額から年間手数料をもらう「AUM(アセット・アンダー・マネジメント)型」を選ぶ人もいます。

——岩崎さんはどのようなスタイルを取られているのですか?

私の場合は、相談時間に応じて報酬をいただく、時間給型です。アドバイス“だけ”を売っています。

主には日本語を話す米国在住者を対象にした家計管理や投資、保険、リタイアメント計画など包括的なアドバイスを提供します。例外はあるものの、米国は広大ですので、基本的にはオンラインで相談を受けています。

―日本では、いわゆる純粋なお金の相談業だけで生計を立てられるようになるのは簡単でないと言われています。その点、米国はいかがですか?

米国も似た状況にあると思います。私の個人の状況で言えば、この相談業だけで家計を維持しようとしてないので、時間給のスタイルができているという側面もあるのは現実です。

そのため、先ほどご紹介した「コミッション型」や「AUM型」を選ぶ人も多いという実情があります。

例えばコミッション型の1つとして、FP兼保険のエージェントとして活動されている人は、かなり多いです。私のような時間給型とは違い、セールスの工夫次第で多くの利益が得られるので、FPとして生計を立てるうえでは1つの選択肢だと思います。

——今お話しにあった、FP兼保険のエージェントに近いものとして、日本は企業内FPとして、保険などの金融商品を販売する例※があります。
※金融商品を仲介・販売するには、例えば保険募集人や証券外務員など他の資格も必要

先ほどの保険エージェント兼FPについて言えば、比較的高い販売手数料を取るFPもいますが、一概に顧客よりも利益を優先しているとも言えません。

手厚いサポートが受けられ、相談者本人も内容を理解したうえで満足しているなら、それは素晴らしいサービスと言えると思います。

もちろん、私がそうした保険を拝見するときは、家計のプロとしてきちんと商品を分析し、より適切な内容をより低コストに抑えるプランを提示はします。実際、コストダウンの提案を行うとすぐに保有商品を見直すというお客様もいます。

いずれにしても、保険のエージェントのおすすめ、私からの提案などすべての選択肢を考慮したうえで、お客様自身が納得して選ぶというのが大切なのではないでしょうか。

そういう意味では、数多ある“アドバイザー”の選択肢から、私は「特定の企業に対する利益に偏らない、中立的なアドバイスを提供するFP」としてありたい、というのがモットーです。