日経新聞「私の履歴書」KKR共同創業者兼会長のヘンリー・クラビス氏の連載が月末の本日で最終回を迎えました。私はウェブの時代にあっても電子版と紙版併用主義者です。そこで、毎朝紙版でクラビス氏の「私の履歴書」を読むことから一日が始まりました。さらにオフィスでこの「私の履歴書」を切りとってノートに貼り、ノートの余白に、その都度コメントを書き込みました。
そもそも、なぜこの時期にクラビス氏が登場したのかが不思議だったのです。私自身、KKRは典型的な「ハゲタカ」と思っていました。29日には日経新聞主催の「世界経営者会議」にクラビス氏が登壇し、日経も「ヨイショ」がうまいなあと思いました。そういう日経の社業的な色彩を抜きにしても、クラビス氏の連載を非常に面白く読みました。
何よりも引き込まれたのは、クラビス氏をはじめとした共同創業者の方々の志の高さはもちろん、その志にいたった両親の教え、ウエイターやタクシー運転手など他者への思いやりのあるふるまいにありました。10月2日には「他者への思いやりを重んじる規律は今『ゴールデンルール(黄金律)』としてKKRの風土の根幹をなす。」とのくだりがあります。26日には「黄金律」という題で、さらに詳しく書かれています。人材の採用にあたっては、「例えば夕食に連れ出し、ウエーターが食事や飲み物を運ぶ度に心から『ありがとう』と言うかを見る。会社では、面接担当者以外の人にどう接するかも観察する。印象づけたい相手以外の人にどんな態度を取るのかに、本当の人柄がにじみ出るからだ。」と説いています。
また、やや細かいエピソードですが、7日の記事のなかで、クラビス氏がニューヨークのステーキハウスでKKR創業の構想を練る場面で「これらの構想を、私たちは店のナプキンに書き留めていった。」と記しています。わざわざ「店のナプキン」という文言が入っています。この文言を読み、わたしは20年余前の米国研修を思い出しました。講師は私にこうおっしゃいました。「ロゴマークの入ったカクテルナプキンに書き込めば、店の名前が頭に浮かび、そのときの話の内容をより鮮明に思いだす。白いメモ用紙ではだめです」と。毎日が学びに通じる今月の「私の履歴書」でした。