finasee Pro(フィナシープロ)
新規登録
ログイン
新着 人気 特集・連載 リテール&ウェルス 有価証券運用 金融機関経営 ビジネス動画 サーベイレポート
永田町・霞が関ウォッチャーのひとり言

あす石破内閣発足 問われるNISA 利便性向上とDC拡充の本気度

文月つむぎ
文月つむぎ
2024.09.30
会員限定
あす石破内閣発足 問われるNISA 利便性向上とDC拡充の本気度

岸田政権「新しい資本主義」の成果

先日、岸田文雄政権を支えた自民党幹部が主催するセミナーに参加した。彼によると、過去3年間の岸田政権では、「新しい資本主義」をキャッチフレーズとして、以下の4項目の遂行に注力したという。

①官民連携 → 例えば、大学ファンド、EV、蓄電池などへ政府よりシードマネーを供給、民間の投資を促す

②中長期的な政府のコミットメント → GX、半導体、バイオ、量子コンピューター等への長期サポートを政府として表明

③スタートアップ支援 → 今後5年間で10倍増の投資を目指す

④貯蓄から投資 → NISA拡充

特に、「貯蓄から投資」については、個人金融資産が証券市場に流入し、企業の成長を促し、企業価値の向上によって家計が潤う、いわゆる「成長と分配の好循環」を拡大・定着させていくことが肝要であり、そのためにも次期総理には「貯蓄から投資へ」の流れをさらに強めてもらいたいと述べていた。

その想いは金融庁や金融業界も共有しており、金融庁が8月30日に公表し、また、日証協と投信協が連名で9月18日に公表した令和7年度(2025 年度)税制改正要望では、歩調を合わせて、NISA 制度のさらなる利便性向上や確定拠出年金制度の拡充等を盛り込んでいる。

このうち、NISAの利便性向上については、「口座開設10年後の所在地確認のデジタル化・簡素化」のほか、「金融機関変更時の即日買付」や「つみたて投資枠におけるアクティブETFの要件整備やETFの最低取引単位の見直し」が掲げられている。

アクティブETFの拡大を急ぐ背景は

業界関係者やメディアが水面下で提言していた「利用可能年齢の引下げ」や「金融機関変更時の資産持ち運び(ポータビリティ)の許容」、「NISA口座保有者の出国時対応の見直し(非課税適用者の要件緩和、非課税適用期間の延長)」などに先駆けて、「アクティブETFの要件整備」が盛り込まれたことには少々驚いた。金融庁では「資産運用業高度化プログレスレポート2023」において「運用報酬以外の手数料が安い商品の提供拡大(例:アクティブETFの解禁等)に期待」と記すなど布石を打っていたので、当該商品の言及に唐突感はなかった。

とはいえ、つみたて投資枠の対象商品として既に51本のアクティブ投資信託が並ぶ中、本邦の個人投資家に馴染みの薄いアクティブETFの導入に意欲を示したのは、その商品に積極的に取り組んでいる海外の有力運用会社等からの圧があったからなのか、あるいは、単にインデックス投資一辺倒の状況を憂えてのことなのか。

「転職があたりまえの時代」に合ったDC制度を

さて、確定拠出年金制度の拡充については、岸田総理が8月28日に開催された「資産運用立国と日本金融市場の魅力向上に関する会合」において、「個人年金の充実に向けて、NISAに続き、iDeCoの大胆な改革を実行してもらいたい」と述べるなど、政府主導の施策となりつつある。こうした中、金融庁・日証協ともに「iDeCoにおける加入可能年齢及び受給開始年齢上限の引上げ」のほか、「拠出限度額の引上げ」を税制改正要望に掲げている。さらに日証協では、「50歳以上の者に対するキャッチアップ拠出の設定」や「拠出限度額内でのマッチング拠出の弾力化」、「老齢給付金の受給要件の緩和(通算加入期間に関わらず60歳から受給可能、もしくは、要通算加入期間を2分の1とする)」など、多様な提言を盛り込んだ。

現在の確定拠出年金制度はとても複雑だ。自営業、会社員、公務員、専業主婦といった公的年金の加入区分によって掛金の上限が異なるほか、企業型DCとiDeCoが併存する中、拠出限度額は両制度の合算管理となっている。iDeCoの(運用関連業務を担う)運営管理機関では企業型DCの掛金状況をリアルタイムで把握できないため、加入者は自ら拠出限度額管理を行う必要がある。ちなみに、NISA制度では口座開設が一つの金融機関に限られていることもあり、当該金融機関で枠管理が可能であり、加入者の負担は軽い。

また、確定拠出年金制度運営には運営管理機関のほか、国民年金基金連合会や信託銀行など複数の機関が関与しており、加入時、掛金拠出中、給付受給時、還付時(限度枠を超えて拠出された掛金などを加入者に返す時)、移換時(運営管理機関を変更する場合など)等に各機関に一定の手数料を支払う必要があり、加入者はこうした手数料負担を認識したうえで運用商品を選定することが求められる。

このため、政府は加入者が適切に運用商品を選択できるように支援すべく、2018年5月に確定拠出年金法を改正し、運用商品本数の抑制(35本まで)や運用商品除外規定の緩和(商品選択者の3分の2以上の同意で可とする)、指定運用方法に関する規定の整備(デフォルト商品による運用の規定整備)などを進めている。しかしながら、企業年金連合会が今年3月に公表した「確定拠出年金実態調査結果(2022年度決算)」によると、企業型DCにおいては、いまだに資産残高の4割は(預金や保険といった低利の)元本確保型商品が占めているほか、元本確保型商品のみで運用する加入者が6割以上を占める企業も全体の1割程度存在しており、コストを勘案した適切なリスクテイクが十分浸透しているとは言えず、引き続き継続投資教育が欠かせない状況にある。

確定拠出年金制度は企業型DCがベースとなっており、iDeCoはそれを補完する位置づけで存在しているがゆえに、制度が複雑化している。転職が珍しくない時代にあって、両制度を合算管理する苦労は小さくない。加入者の利便性向上のためには、企業型DCとiDeCoを明確に切り分け個々に枠管理を行う、あるいは、関与する機関の事務効率化を進めることで手数料を引き下げるなど、制度の簡素化や低コスト化を強力に進める必要があるように思う。

岸田政権「新しい資本主義」の成果

先日、岸田文雄政権を支えた自民党幹部が主催するセミナーに参加した。彼によると、過去3年間の岸田政権では、「新しい資本主義」をキャッチフレーズとして、以下の4項目の遂行に注力したという。

続きを読むには…
この記事は会員限定です
会員登録がお済みの方ログイン
ご登録いただくと、オリジナルコンテンツを無料でご覧いただけます。
投資信託販売会社様(無料)はこちら
上記以外の企業様(有料)はこちら
※会員登録は、金融業界(銀行、証券、信金、IFA法人、保険代理店)にお勤めの方を対象にしております。
法人会員とは別に、個人で登録する読者モニター会員を募集しています。 読者モニター会員の登録はこちら
※投資信託の販売に携わる会社にお勤めの方に限定しております。
モニター会員は、投資信託の販売に携わる企業にお勤めで、以下にご協力いただける方を対象としております。
・モニター向けアンケートへの回答
・運用会社ブランドインテグレーション評価調査の回答
・その他各種アンケートへの回答協力
1

関連キーワード

  • #金融庁
  • #法律・制度
  • #NISA
  • #ETF
前の記事
【文月つむぎ】J-FLECの金融経済教材、次の改定に向け「文月案」を考える
2024.09.05
次の記事
【文月つむぎ】長期・積立・分散投資の認知度、若者ほど低い現状を憂う 
日証協の全国調査を読み解く
2024.10.24

この連載の記事一覧

永田町・霞が関ウォッチャーのひとり言

【文月つむぎ】伊藤豊氏が金融庁長官に就任へ 
知っておきたい新長官&3局長の横顔

2025.06.27

【文月つむぎ】投信だけでなく保険販売でもFDを徹底できるか?知っておきたい「保険業法」改正のポイント

2025.06.10

【文月つむぎ】「プラチナNISA」という言葉がない!自民党金融調査会の最新提言を読み解く

2025.06.04

【文月つむぎ】毎月分配型のアウト/セーフは?当局に問われる「線引き力」

2025.05.07

【文月つむぎ】私が相場の先行きを悲観しない究極の理由

2025.04.16

【文月つむぎ】「NISAは現役世代向け」という誤解 シニア層への普及を急ぐべき政治的背景とは

2025.03.11

【文月つむぎ】日証協の「新NISA1年調査」を精読する ゴールベースアプローチの意識が低い?

2025.02.18

【文月つむぎ】「老後2000万円問題」から6年、いまだに資産運用より節約術のほうがウケる世相を憂う

2025.02.10

【文月つむぎ】J-FLEC認定アドバイザーが1000人超に 親しみやすさと使い勝手の向上を急げ

2025.01.29

【文月つむぎ】「NISA限定の投資助言免許を」 金融庁アドバイス報告書に透ける思惑

2025.01.08

おすすめの記事

日本初のハンセンテック指数連動ETFが東証上場―注目浴びる“中国テック株”が投資の選択肢に

Finasee編集部

10億円以上の資産家が多いのは山口県、北陸ではNISA活用が進む。県民性から読み解く日本人の投資性向とは?

Finasee編集部

「オルカン」「S&P500」を追う2強海外アクティブ投信。なぜ? みんなが買う理由がわかった!

Finasee編集部

日本初のハンセンテック指数連動ETFが東証上場―注目浴びる“中国テック株”が投資の選択肢に

Finasee編集部

トランプの米国に疲れた皆さん、欧州はいかが?日本で唯一の「英国株インデックスETF」が上場!

finasee Pro 編集部

【新NISA対象】ブラックロックから「iシェアーズ S&P500 トップ20 ETF」「iシェアーズ ゴールド ETF」が上場! 個人投資家にとっての魅力は…

Finasee編集部

日経平均はもう古い?野村アセットが参入!日本の魅力を凝縮した「JPXプライム150」連動ETFが上場 先物取引もスタート

finasee Pro 編集部

著者情報

文月つむぎ
ふづきつむぎ
民官双方の立場より、長らく資産運用業界をウォッチ。現在、これまでの人脈・経験を生かし、個人の安定的な資産形成に向けた政府・当局や金融機関の取組みについて幅広く情報を収集・分析、コラム執筆などを通し、意見を具申。
続きを読む
この著者の記事一覧はこちら

アクセスランキング

24時間
週間
月間
【特別対談】本音で語る“顧客本位”の理想と現実 現場と行政の対話が照らす「これからの投信窓販」
① 「長期・積立・分散」だけが顧客本位なのか
新プログレスレポートと金融庁幹部人事の背景を読む、キーワードは「官邸の弱体化」と「尻に火が付いた暗号資産対策」
【オフ座談会vol.6:かやば太郎×本石次郎×財研ナオコ】
「支店長! 一般職に投信のセールスをしろとおっしゃいますが、日常業務が忙しくてとても無理です!」
【みさき透】金融庁はなぜ毎月分配型に「免罪符」を与える気になったのか
【連載】藤原延介のアセマネインサイト㉑
パフォーマンス好調な欧州株ファンドに約11年ぶり高水準の資金流入
【文月つむぎ】伊藤豊氏が金融庁長官に就任へ 
知っておきたい新長官&3局長の横顔
ゆうちょ銀・郵便局の売れ筋トップに新設の単位型ファンド、バランス型人気も続く
金融庁が「プログレスレポート2024」の公表を休止した深いワケ 「FDレポート」との違いが出せなくなった?
第11回 投資信託選びの常識を疑え!(その3)
ターゲットイヤー・ファンドは万人向き?
【みさき透】金融庁、資産運用業の監督体制を再編、担当参事官に永山玲奈氏
【文月つむぎ】伊藤豊氏が金融庁長官に就任へ 
知っておきたい新長官&3局長の横顔
新プログレスレポートと金融庁幹部人事の背景を読む、キーワードは「官邸の弱体化」と「尻に火が付いた暗号資産対策」
【オフ座談会vol.6:かやば太郎×本石次郎×財研ナオコ】
【連載】投信ビジネスのあしたはどっちだ
資産形成を達成した後…「次なる課題」
静銀ティーエム証券の売れ筋で際立つパフォーマンスをみせた「モノポリー戦略株式」とは?
【みさき透】金融庁はなぜ毎月分配型に「免罪符」を与える気になったのか
「支店長! 一般職に投信のセールスをしろとおっしゃいますが、日常業務が忙しくてとても無理です!」
【連載】藤原延介のアセマネインサイト㉑
パフォーマンス好調な欧州株ファンドに約11年ぶり高水準の資金流入
【金融風土記】宮崎県には地方創生の「優等生」も! 地域金融機関の集約が進む
金融庁が「プログレスレポート2024」の公表を休止した深いワケ 「FDレポート」との違いが出せなくなった?
不安定な市場環境で「利回り」と「信用力」の高さを併せ持つ米国地方債にチャンス=フランクリン・テンプルトン・アメリカ地方債ファンドが設定3周年

「自立と連携」を掲げて試行錯誤を重ね、確立された「銀証連携」モデルが新時代を拓く case of しずおかフィナンシャルグループ
投信ビジネスに携わる金融のプロに聞く!「自分が買いたい」ファンド【アクティブファンド編】
【文月つむぎ】投信だけでなく保険販売でもFDを徹底できるか?知っておきたい「保険業法」改正のポイント
【文月つむぎ】「プラチナNISA」という言葉がない!自民党金融調査会の最新提言を読み解く
「支店長! 一般職に投信のセールスをしろとおっしゃいますが、日常業務が忙しくてとても無理です!」
【文月つむぎ】伊藤豊氏が金融庁長官に就任へ 
知っておきたい新長官&3局長の横顔
いわき信組の不正を見抜けなかった金融庁、「根本的な人員不足」も背景
浪川攻の一刀両断
手数料自由化とファンドラップから見る日本と米国の証券リテール改革の相違
三菱UFJMS証券の売れ筋にみえる国内株式ファンドへの期待、物価高で苦しむ年金生活者を支えるファンドとは?
外貨関連を軸に多彩なサービスを展開顧客の信頼を勝ち取る「総資産アプローチ」case of SMBC信託銀行
ランキングをもっと見る
finasee Pro(フィナシープロ) | 法人契約プランのご案内
  • 著者・識者一覧
  • 本サイトについて
  • 個人情報の取扱いについて
  • 当社ウェブサイトのご利用にあたって
  • 運営会社
  • 個人情報保護方針
  • アクセスデータの取扱い
  • 特定商取引に関する法律に基づく表示
  • お問い合わせ
  • 資料請求
© 2025 finasee Pro
有料会員限定機能です
有料会員登録はこちら
会員登録がお済みの方ログイン
有料プランの詳細はこちら