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永田町・霞が関ウォッチャーのひとり言

【文月つむぎ】J-FLECの金融経済教材、次の改定に向け「文月案」を考える

文月つむぎ
文月つむぎ
2024.09.05
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【文月つむぎ】J-FLECの金融経済教材、次の改定に向け「文月案」を考える

8月に入り、金融経済教育推進機構(J-FLEC)が本格稼働し始めた。8月2日の立ち上げ式には、政府より岸田文雄首相のほか、村井英樹官房副長官、神田潤一内閣府大臣政務官、井藤英樹金融庁長官が出席した。岸田首相は職員への訓示を行うとともに個別相談を受け付ける電話相談室を視察し、金融経済教育に関する関係機関(日銀、日証協、全銀協、投信協、日本FP協会などが出席)とも会合を行うなど、国民の金融リテラシーの向上に官民一体となって取り組んでいく姿勢を強くアピールした。

また、J-FLECでは、全国の企業や学校等に、J-FLECが認定した講師を派遣し、様々な年齢層に応じ、金融経済に関する講師派遣(出張授業)を実施することとする中、8月14日には、講師が使用する教材をHP上で公表した。 

 

 

教材はイラストを多用しクイズ形式を取り入れるなど、理解しやすいように工夫をこらしている。小学生低学年から年次別に整備しており、かなり学校教育に力を入れていることがうかがわれる。年齢層が上がるにつれ内容を充実させており、最大で100ページ程度の厚みとなっているが、イラストやグラフ、表を活用しているので、「120分」としている講義時間は妥当のように思われる。

60代向けの内容が「終活」「相続」ばかりでは寂しい

早速、筆者の年齢に近い「60代以上 シニア層」編の内容をのぞいてみたところ、「豊かな老後のために知っておきたいお金の話」というタイトルが付けられており、充実したセカンドライフを送るための金融ノウハウ的なものが掲げられているものと期待していたのだが、目次には「終活を考える」「成年後見制度」「贈与・相続」「金融トラブル、相談窓口」といった項目が並んでおり、何とも寂しい気持ちになってしまった。確かに考えてみれば、お金を「使う」「貯める・増やす」「備える」「借りる」といったステージはほぼ終わり、いかに綺麗に「残す」かに重点が置かれるのは仕方のないところか。

とはいえ、「人生100年時代」が現実化しつつある中、例えば60代以上を「ブロンズ・シニア」「ゴールド・シニア」「プラチナ・シニア」などと細分化し、60歳超の就労者が増加している状況下、在職老齢年金や在職定時改定の仕組みや、健康寿命と資産寿命の関係などについて解説することも検討して良いと思うのだが、いかがだろうか。また、「残す」財産としては不動産や(貯蓄性)保険を持つシニアも多いことから、不動産取引や保険に係る税金や有効活用などについて基本的な解説があっても良いように思う。

若手・中堅にはキャッシュフローを教えよ

こうした中、「若手・中堅社会人」編の項目には「家計管理」と「生活設計(ライフプランニング)」が含まれ、収入・支出のバランスを意識することの重要性を唱えているのだが、収支バランスを確認するうえで欠かせないキャッシュフロー表についての解説は見当たらず、金融庁やFP協会が提供する(ライフプラン)シミュレーションの紹介に留めている。例えばクイズ形式でも構わないので、何年分かのキャッシュフロー表を作成してもらい、将来のイベントも含め、何をすれば収支を収めていくことができるのかを具体的な数字を使って理解してもらうことが重要かと思う。

ちなみに、以前筆者が受けた民間企業のベテラン社会人向けの「たそがれ研修」では、具体的に退職金や老齢基礎年金、老齢厚生年金といった収入見込み額を教えてもらった上で、一般的な生活費や税金、社会保険料といった支出を十分カバー出来るか、各自で確認する授業があった。筆者は当時、年金制度の知識がほぼ皆無であったこともあり、最初、「ああこの老齢基礎年金の金額(筆者の見込み額は70万円程度であったと記憶している)であれば、余裕のある老後生活が送れるな」とほくそ笑んでいたのだが、それが月額ではなく年額の見込み額であったことを知り、しばらく凍り付いていたことをいまだに覚えている。その授業がその後の生活設計の見直しに大いに役立ったことより、シニア層に対してもキャッシュフロー表の作成を指南しても良いと思う次第だ。

また、そもそもであるが、こうした教材で「〇〇のために知っておきたいお金の話」を聞いたとしても、個々人が抱える不安や課題を具体的に解決するのは難しいように思う。例えば、お金を「貯める・増やす」場合の留意点を学んだとしても、具体的に各自のニーズに適う商品を洗い出し、選定し、実際に購入し、適時に資金化するには、適切な情報収集やアドバイスが必要だ。例えば、有益な情報やアドバイスを受けるうえで、どのような金融機関に相談すれば良いのか、あるいは、どのような点に留意して金融機関を選べばよいのかを指南することが必要ではないか。

また、金融トラブルについて、ポンジ・スキームが詳しく語られているが、訪問販売トラブルやお試しネット通販トラブル、定期購入トラブル、転売チケットトラブルなど多種多様な手口が横行しており、さらに事例を並べて注意喚起する必要があるように思う。

さらに、例えば、8月上旬の株価急落時に、どのように対処すれば良いのか途方に暮れた投資初心者も多かったと思われるが、そうした方々に対し、J-FLECが中立・公平な立場で、具体的にどのような点に留意して対応すべきか、HPなどでタイムリーに指南するといったことも検討してみてはいかがだろうか。

勝手気ままに色々提案してみたが、J-FLECは稼働を始めたばかりだ。今後の情報提供の充実に期待している。

8月に入り、金融経済教育推進機構(J-FLEC)が本格稼働し始めた。8月2日の立ち上げ式には、政府より岸田文雄首相のほか、村井英樹官房副長官、神田潤一内閣府大臣政務官、井藤英樹金融庁長官が出席した。岸田首相は職員への訓示を行うとともに個別相談を受け付ける電話相談室を視察し、金融経済教育に関する関係機関(日銀、日証協、全銀協、投信協、日本FP協会などが出席)とも会合を行うなど、国民の金融リテラシーの向上に官民一体となって取り組んでいく姿勢を強くアピールした。

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文月つむぎ
ふづきつむぎ
民官双方の立場より、長らく資産運用業界をウォッチ。現在、これまでの人脈・経験を生かし、個人の安定的な資産形成に向けた政府・当局や金融機関の取組みについて幅広く情報を収集・分析、コラム執筆などを通し、意見を具申。
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