ESG投資も着々と強化

わずか1年で37.8兆円ものリターンを稼いだと聞くと、そんなに株のリスクを取って大丈夫なの? と不安に思う向きもあるでしょう。2019年度の第4四半期にはコロナショックによってたった3カ月間で17.7兆円ものマイナスとなったわけで、過去に短期的に大きなマイナスリターンが発生するたびにメディアでは「巨額損失」「年金消失」といったヘッドラインで報道が批判的になされることもしばしばありました。

もっとも、2020年度第3四半期の運用実績公表を受けた記事(「年金が10兆円増えた」は早合点!? GPIF運用実績報道との正しい付き合い方)でも触れた通り、GPIFは「100年先を見据えた超長期投資家」という姿勢を貫いています。

公的年金ならではの超長期の投資ホライズンで、短期的な流行り廃りや市場のブレに惑わされることなく、ユニバーサルオーナー(広範な資産を持つ大規模なアセットオーナー)として、「負の外部性」と呼ばれる環境問題や社会問題による悪影響を最小限にとどめ、市場全体はもとより社会全体を「より良くする」ことで持続的な成長を享受していこう、というスタンスです。

その投資哲学を象徴する取り組みが「ESG投資」と言えるでしょう。国内外合わせて足もと約95兆円の株式ポートフォリオのうち、国内株式の約93%、外国株式の約88%を指数と連動するパッシブ運用が占めています。もちろん、世界最大規模を誇るユニバーサルオーナーとして、マーケットインパクトも考慮した投資を行わざるを得ず、資産の大部分を、パッシブ運用に配分するのは自然な流れでしょうが、パッシブだからといってただ漫然と市場を丸ごと買って静観しているわけではありません。

時価総額の大きさ以外にESG評価の高い企業をオーバーウェイトしてポートフォリオを構築する「ESG指数」(図4)を複数採用しているほか、2018年にはTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言にも賛同を表明、TCFD提言に基づいた気候変動のリスク・機会にまつわる取り組みを開示するなど、投資行動・ディスクロージャーの面でも国内はもとより世界屈指の「ESG投資家」として存在感を高めています。GPIFの「2019年度 ESG活動報告」でも詳しく開示されていますので、興味があればご覧ください。(さらに今夏には2020年度の最新レポートが発表される予定です)。

図4.GPIFが採用するESGフォーカスの株式指数

出所:GPIF「2020年度業務概況書」

なお記事中に登場した、「2020年度業務概況書」もご覧になれます。