「金利上昇=株価下落」という定説は正しいのか?

金利上昇が株価にとってネガティブというのは、利上げによって企業の資金調達意欲が後退し、設備投資をしなくなる。あるいは住宅ローンなどの金利が上昇するため個人の住宅購入意欲が削がれ、個人消費全般に悪い影響を及ぼすといった理由からですが、逆に利上げが株価にとってポジティブな要因になることも考えられます。

なぜ利上げをするのかというと、「景気が順調に回復し、インフレ懸念が強まっているから」です。景気が順調に回復しているのは、株価にとってポジティブ要因です。またインフレについても、企業の売上は名目ベースになるので、インフレが進むほど売上が伸び、同時に利益にとっても増額要因になります。つまりインフレも株価にとってはポジティブ要因です。

ポートフォリオに株式を組み入れることによって、保有資産のインフレ耐性が強まるのは、インフレが企業にとって売上や利益の押し上げ要因になるからです。売上や利益が増えれば、株価は上昇します。結果、インフレが進んだとしても、株式をポートフォリオに組み入れておけば、物価上昇によって資産価値が目減りするリスクを抑えることができるのです。

そう考えると、景気の順調な回復やインフレ懸念は、株価上昇につながると考えることもできます。過去の米国金利と株価の関係を見ても、実は金利上昇局面において株価が上昇しているケースがあります。

例えば2013年5月から12月まで、当時のFRB議長だったバーナンキ氏が量的緩和の縮小を示唆したことから米国10年国債の利回りは1.4%上昇しましたが、この間にS&P500は15%も上昇しました。2015年1月から6月もそうです。この時は2015年12月に利上げが行われ、ゼロ金利政策が解除されました。この時、米国10年国債の利回りは0.8%上昇したものの、S&P500は5%上昇しています。

さらに2016年7月から2017年3月の期間ですが、この時は2016年の大統領選挙でトランプ氏が勝利し、トランプ減税によって景気が回復するとの見方から、米10年国債の利回りは1.3%上昇しましたが、S&P500は11%上昇しています。それ以降も2017年9月から2018年11月までの金利上昇局面、2020年8月から2021年2月までの金利上昇局面のいずれも、やはりS&P500は上昇しています。

もちろん、過去のケースがそのまま将来に当てはまるとは言いません。とはいえ、前述の事例から考えると、「金利上昇=株価下落」というのは、いささか怪しい話のようにも見えてきます。