「リスク」は「損」ではなく「不確実性」、より良い未来を目指す経済成長に投資する
また「投資=リスク」というイメージから、資産運用に前向きになれないとのことですが、これは確定拠出年金に加入をする、しないに関わらず見直したい固定観念です。
私たちの普段の生活では、リスクという言葉を危険とか損をするといったネガティブな意味で使うことがほとんどですが、お金の世界では「不確実性」という意味で使います。振り子のように、価値がプラスとマイナスの間を行ったり来たりする、振れるという意味です。ネガティブな意味だけではなく、ポジティブな意味もあり、どちらになるのかあらかじめ分からないということです。従って投資にリスクがあるというのは、「危ない」という意味でもなく、「必ず損をする」という意味でもないのです。
では、投資とは何でしょうか? 投資には、世の中をよりよくするための「価値ある資産」を育てるという意味があります。私たちの暮らしがより豊かになるようなモノやサービスを提供する企業を私たち自身が選び、そこに投資をしてその成長の恩恵を受け取る、それが投資です。
例えば経済には、良い時も悪い時もありますが、やはり「明日はより良くなりたい」という人間が生み出すものですから、長期的には成長していくという前提があります。世界には未来のために頑張る人がたくさんいて、失敗を繰り返しながらやがて成功していくのが常。その集合体である世界経済に長期でお金を投じるのが投資であり、資産形成です。一方、低金利時代における銀行預金は、残念ながら経済成長の恩恵を十分に受けられるとは言い難いのが現状です。そう考えると、「投資にはリスクがあるから」と、お金をそのまま定期預金におきっぱなしにしておくのは非常にもったいないことだと言えます。
従って確定拠出年金では、経済の成長とともにお金も成長させる選択をするべきです。具体的には、世界の株式などに投資をする投資信託を選びましょう。
今回は、会社の退職金制度についてどのような選択をするべきかというご質問にお答えしましたが、相談者の辻さんにとって考えるべきことは、この問題だけではありません。これを機会にぜひ、ご自身の将来のために資産形成を始めましょう。会社の確定拠出年金に加えて、2022年からは個人型確定拠出年金(iDeCo)も併用できるようになります。他にもNISA(少額投資非課税制度)など、これからの資産形成に有効な仕組みもあります。未来の自分をイメージしながら、今、取るべき行動を考えていきましょう。