老後資金を貯める最強の仕組みが「確定拠出年金」

「長い目で見たら確定拠出年金の方が良いのでしょうか?」とのご質問ですが、老後資金を貯めることを目的とすると、確定拠出年金は最強の仕組みです。一方で、60歳前に資金を使う予定のある方、例えば45歳で海外移住をするために資金を作りたいという目的でお金を貯めたいのであれば、確定拠出年金は最悪の仕組みです。なぜなら確定拠出年金は60歳前のお金の引き出しは原則、できないからです。

では、「何となく手取りが増えるからいいかな?」と前払い退職金を選んでいる場合はどうでしょうか? 確定拠出年金には、前払い退職金と比較して次の3つのメリットがありますので、あらためて考えてみましょう。

前払い退職金と比較した確定拠出年金の3つのメリット

1つ目は控除での税金軽減メリットです。仮に月1万円を「前払い退職金」として会社から受け取れば、通常の給与と同じ扱いになりますから、社会保険料と所得税・住民税が差し引かれます。社会保険料は15%、所得税は最低でも5%、住民税は10%ですから、手取りは7000円です。一方、「確定拠出年金」として受け取れば、社会保険料も税金も払わなくてよいお金となりますから、1万円がまるまる自分のものとなります。受け取り方を変えただけで3割も得をするのですから、これは大きなメリットです。

もちろん前払い退職金の金額に対して社会保険料を支払うということは、その分、社会保険給付については手厚くなります。特に健康保険からの出産手当金や傷病手当金、雇用保険からの育児休業手当や失業給付などの給付額の変化については、気になる方も少なくないでしょう。しかし実際には、標準報酬月額の等級によって判断されるので、必ずしも前払い退職金を選べば給付が手厚くなるとも限らず、また条件によっては翌年以降も状況は変わってきます。

2つ目は非課税のメリットです。辻さんは現在、銀行預金を利用して貯蓄をされているとのことですが、預金利息には税金がかかります。その課税率は20.315%ですから、相当の負担です。しかし確定拠出年金で仮に同じように定期預金をした場合(確定拠出年金では元本確保型と呼ばれる定期預金等と、元本変動型と呼ばれる投資信託から自由に金融商品を選ぶことができます)、この20.315%もの税金は全くかかりません。課税か非課税か、お金の成長の効率を考えるととても大きな違いです。これは投資信託を選んでも同様で、運用益に対して課税はされません。非課税での運用は最長70歳まで継続できるので、これも確定拠出年金の大きなメリットです。

3つ目は、半ば強制的に貯められるということです。人生100年時代と言われる今、老後のお金を自分自身でしっかりと準備することはとても重要です。以前話題となった「老後2000万円問題」をそのまま老後に必要なお金だと仮定して、38歳の今から60歳までにその分を貯めようとすると、毎月の積立額は7.5万円、50歳から貯めようとすると月16.7万円も必要です。

老後はすべての人に訪れますから、やはり早いうちから備えるべきでしょう。企業型確定拠出年金は、半ば強制的に老後資金が作れる会社の仕組みであるという点もメリットと考えられます。老後資金として60歳以降、一括または分割でお金を引き出すことができますが、その際にも税金が優遇されます。

上記メリットも念頭に置いて、前払い退職金として「今」の自分がそのお金を受け取るのか、あるいは確定拠出年金として、「将来の自分」に仕送りをすべきか、しっかりと考えてみましょう。