「投資は怖い」が「損失を取り戻したい」気持ちを汲む
実は伊藤さんには相続した8000万円もの普通預金があり、老後のキャッシュフロー表を作成したところ、黒字の見通しでした。そのため、無理にお金を増やす必要はなく、「投資をしない」という選択もあり得ました。
私たちIFAの仕事は商品を売ることではなく、あくまでもお客さまが保有する資産の運用・管理方法のトータルコンサルティング。資産を増やすだけではなく、資産を「守る」方法もお客さまのニーズに応じて提案します。そのため「投資はもう絶対にしたくない」というお客さまに対して、無理に商品をお勧めするようなことはありません。
とはいえ、伊藤さんの話をよくよく聞いていくと、「これまで損失を出した分、どうしても取り返したい」という気持ちも強くお持ちのようでした。
ただ、早く取り返そうとなると、取るべきリスク量は大きくならざるを得ません。投資にネガティブな印象を抱いている伊藤さんには、ハイリスク・ハイリターンな投資は不向きです。そのため、価格変動の小さい債券を中心とし、一部で利益を追求できる商品も組み込む方法を提案しました。
利益の追求と安定運用を両立させるには
まずは劣後債を4000万円分購入する代わりに、普通預金は5000万円へ、投資信託は2000万円への減らし、商品も現状の毎月分配型とテーマ型ファンドから乗り換えてもらいました。劣後債は社債の一種で、発行体の企業が破綻した際の弁済を受けられる優先順位が低い代わりに、利回りが高めに設定されています。債券の中では比較的ハイリスク・ハイリターンですが、一切弁済を受けられない株式と比べるとローリスクです。表面利率が6%のソフトバンクグループと、4%のアリアンツの劣後債を組み入れました。
投資信託については米国株とバランス型の商品をそれぞれ1000万円ずつ購入してもらいました。前者は「ナスダック100指数」への連動を目指す投資信託となります。「安定した運用の中でも利益を追求したい」という伊藤さんの意思を踏まえ、グロース株を中心にさらなる成長が期待できる銘柄で構成されたナスダックを選びました。
バランス型投信については、株と債券を組み入れ、安定的な運用を目指す「投資のソムリエ」を提案しました。下落時に債券や現金の保有率を上げることで価格変動を抑制するなど、相場環境によって機動的な運用を行うのが特徴で、今回のコロナショック時にもプラスのリターンを確保し、相場急落時の強さが評価された商品でもあります。米国株で利益を追求しながらバランス型ファンドで安定した運用を目指す、という方針にご納得いただきました。