コロナの影響で実施された3つの金融緩和政策

今回の新型コロナウイルス感染拡大の影響に対応するため、日銀は企業の資金繰りを支援するとともに金融市場を安定させるための政策を行った。

具体的には、以下の3つの政策を行うと決定した。

①積極的に国債を買い入れ、円資金の潤沢な供給に努める
②民間企業の債務を担保に金利0%で資金提供を行い、社債などの買入枠を増加させる
③ETF・J-REITを積極的に買い入れる

まず①を行うことで、世の中に出回るお金の量を増やした。そして②により、企業の資金調達をサポート。最後の③については連載第1回目の『実体経済悪化でも株価は上がる不思議な現象と「日銀ETF買い」の関係』でも紹介したが、個人投資家の不安を緩和し、投資を促すことでコロナショック後の市場反発に大きく寄与したと言われる。

前述したように企業の投資や個人の消費を促す狙いだけでなく、株価の下支えなど投資家にとっても影響はあるわけだ。

現在の金融緩和は23年以降も続く?

日銀は10月29日の金融政策決定会合で、前述した大規模な金融緩和策と新型コロナウイルス感染拡大を受けた企業への資金繰り支援を継続すると決めた。

背景には、コロナの長期化が予想されることがあると言われている。事実、日銀が公表している「展望レポート」によると、2020年7月時点では今年度のGDPの伸び率は前年と比べてマイナス4.7%としていたが、10月にはマイナス5.5%へと引き下げた。つまりコロナの長期化を見据えて、見通しを下方修正したわけだ。そして経済の回復についてはあくまでも長丁場になるとの見通しで、来年度からプラスに転じるとの見解を示している。

コロナショックが起こった2020年3月を基準に見ると、日本経済は回復へと向かいつつあると言われる。一方で、GDPの伸び率の見通しが引き下げられたわけだから、まだまだV字回復とは言えない状況が続くのだろう。2020年12月現在、1日の感染者数が全国で2000人を超える日もあるなど第3波の襲来とも言われているなか、現在の金融緩和政策はある程度長期化しそうだ。

なお、連載8回目の『議長の発言で株価や為替相場も動く! FRBとはどんな機関か』でも紹介したが、日銀の米国版であるFRB(The Federal Reserve Boardの略称/連邦準備理事会)は少なくとも2023年末まではゼロ金利政策をはじめとする金融緩和を維持する方針を表明している。日銀の黒田東彦総裁も金利を引き上げるのは2021年度や2022年度でも遠い気がすると発言しており、FRBと同様、2023年以降も現在の金融緩和政策は継続するかもしれない。

日銀の動向次第では、株式市場が動く可能性もあるわけだが、とはいえ将来の予想は難しい。そのため、やはり長期の資産形成においてはリスクを抑えられるような長期・分散・積立の運用が望ましいと言えそうだ。