出張需要の後退で航空産業は構造的不況業種に?

さて、企業の出張需要が戻らないとなったら、航空会社に及ぼす影響は甚大なものになりそうです。

飛行機で出張する人は、経営者クラスがファーストクラス、役員・部長クラスがビジネスクラスを利用するケースが多いでしょう。そしてこれらの料金を、マイルを活用して割り引いてもらったり、格安航空チケットを探したりして利用する人はほとんどいません。大半は正規料金の顧客です。

当然、1便を飛ばすことで航空会社が得られる収益のうち、ファーストクラスとビジネスクラスに正規料金で搭乗している人たちの占める割合が高いのは自明です。つまり上顧客というわけですが、その人たちの出張需要が大幅に後退すれば、航空会社としては上顧客を一気に失うことになります。これはFSC(フルサービスキャリア)にとっては大きなダメージです。

そうなると、ファーストクラスとビジネスクラスを大幅に縮小して、ほとんどの席をエコノミークラスするか、もしくは全席をエコノミークラスにして搭乗率を引き上げる価格設定にするという方法も考えられますが、これだとLCC(ローコストキャリア)と何が違うのかということになり、FSCである全日空の存在意義を根本から揺るがしかねない事態になります。

すでに、5月から8月にかけて、チリのラタム航空、タイのタイ国際航空、コロンビアのアビアンカ航空、メキシコのアエロメヒコ、タイのノックスクート・エアライン、オーストラリアのヴァージン・アトランティック航空が破産法の適用を申請、あるいは清算されました。Webミーティングの普及によって、世界中でビジネスパーソンの出張需要が後退すれば、航空産業は構造的不況業種になる恐れがあるのです。