Covid-19という新型コロナウイルスの世界的なパンデミックで、人々の生活様式の一部は着実に変わっていきます。その影響が企業収益にも及んできました。

全日本空輸(ANA)を傘下に持つANAホールディングスは10月27日、2021年3月期の決算が連結ベースで5100億円の赤字になる見通しだと発表しました。長距離国際線で使用している大型機35機を削減するなど構造改革も併せて発表され、抜本的な改革が不可避となっています。

パンデミックの収束後、元に戻るものと戻らないもの

国が旅行代金について最大で半額まで補助を出すGoToキャンペーンは、9月の4連休あたりから効果が出始めてきて、観光地にも徐々に人が戻りつつあるようですが、おそらく航空会社にとっては、それでも先行きを楽観視することはできないでしょう。しかも、それは日本の航空会社に限った話ではなく、今後世界的に航空会社の経営は厳しくなっていく恐れがあります。それは、Covid-19のワクチンが開発され、世界的にパンデミックが抑え込まれたとしても、です。

つまり、Covid-19のパンデミックが収まったとして、パンデミック以前の状態に戻るものと、戻らないものがあると考えられるのです。例えば外食産業や観光は、パンデミックリスクが無くなれば徐々に人が戻ってくるだろうと思われます。

しかし、ひょっとしたらもう戻らないのではないか、というものもあります。それは企業の出張需要です。

旅行業界のニュースサイトであるトラベルビジョンが、8月後半から9月にかけて、一般企業などに今後の海外出張について質問をしたところ、パンデミックが収束した後も海外出張は最大で6割、最小でも4割は減らすという答えが返ってきたそうです。

その理由については、「出資先企業の取締役会や株主総会への参加が出張全体の2割を占めていたが、Webでの参加が可能になったので、この分の出張は削減される」「社内会議はもちろん商談もZoomなどのWebミーティングで十分であることが上層部も含めて認識された」「リスクとコストを軽減するため、仮に出張が必要な場合でも1回あたりの参加人数を減らして、一部は日本からWebミーティングで参加する」というようなことが書かれていました。これは海外出張だけでなく国内出張にも当てはまります。

先日、ある上場企業の経営者との対談取材に立ち会ったのですが、その経営者が言うには、「以前は経営者が海外の年金や投資ファンドのところを回って業績などについて説明するロードショーを定期的に行っていたのが、今はWebミーティングでの対応も可能になったので、海外出張の負担が減って助かる」ということでした。

人間は一度、便利さを知ってしまうと元には戻れなくなります。Webミーティングなどはまさにその典型的なケースでしょう。私自身も最近は、取材の一部がWebミーティングに切り替わっていますが、かつてのように往復の移動時間などを考慮すると、非常に効率的であることが分かりました。取材のすべてがWebミーティングに切り替わることはありませんが、Webで済ませられる内容の打ち合わせや取材は、確実にそちらにシフトしていくはずです。

このように考えると、将来的にパンデミックが抑え込まれたとしても、企業の出張需要はあまり戻らないのではないかと考えられるのです。