銀行の最大の強みは商品横断型の「総合提案」

業界でもまだ珍しい、このオンライン相談システムを確立させた宮田氏は、もともと金融や通信、医薬業界などのコールセンターや事務業務をアウトソースで担う企業の出身。東京スター銀行での最初のミッションは、複数に分散されていたコールセンターを統合し、コールセンターシステムを刷新することだったという。「拠点を集約させるとともに、コールセンターシステム刷新に向けて業務プロセスの改善なども手掛けていました。その経験は、後に異動となった商品部門でも非常に役立ちました」。

宮田氏が商品部門の資産運用推進部長に就任したのは2016年7月。ちょうど金融庁の主導で「顧客本位の業務運営」という言葉が使われ始めていたタイミングでもあり、問われていたのはまさに顧客をよく知り課題を共有して解決策を導くプロセスだった。

そこでまず行ったのは、「解決策を提案できる商品の幅を広げること」だったと宮田氏は振り返る。「金融商品仲介を活用した仕組債や国内債券、海外債券、さらに信託契約代理業務を拡充していきましたが、背景にあったのは、銀行の強みは資産運用やローン、保険、相続などの総合提案力にこそあるという想いです。幅を広げた上で、単体商品の提案ではなく総合提案ができるようになれば、銀行ほど強い業態はない。最終的には商品ではなく、良質なコンサルテーションを提供することを目指したかったのです」。

2018年に再びコミュニケーションセンターに戻った宮田氏は、「より現場に近いところから、良質なコンサルテーションを非対面で気軽に提供できる仕組みを追求したい」と決意を新たにする。それが今回のオンライン相談へとつながったわけだ。

もちろん現状が最終形ではなく、提案できる商品が限られるため、まだ宮田氏が目指す「総合提案」にまで至っていないのも事実。近く、オンラインで提案できる商品を新たに拡充予定とのことで、さらなる提案力の強化が期待できそうだ。

さらには対面の店舗と非対面のAirRMの融合も次なる課題で、「やはりリアルな店舗を持っているのが私たちの大きな強みですから、オンラインとうまくつなげる仕組みを構築したい」と宮田氏。具体的には、同センターのAirRMがリレーションを構築した顧客を店舗のRMと共同で担当することで、顧客の信頼感をさらに醸成させる仕組みなども構想されている。

それがリアルであれオンラインであれ、対面主体の販売会社にとってはコンサルティングこそが最大の付加価値となる。宮田氏も話している通り、東京スター銀行では最終的にコンサルティングそのものが価値を創るビジネスモデルを目指すという。コロナ禍でライフプランの必要性を認識する人が増えている中、それが顧客本位な資産運用ビジネスの理想形の1つであるのは間違いないだろう。