リタイア層を狙った、マネージド・ペイアウト・ファンドは縮小傾向

それから、期待されて売り出されたものの、あまり成功しなかったファンドもあります。マネージド・ペイアウト・ファンド(Managed Payout Fund)と呼ばれるもので、すでに退職し固定収入が欲しい層を狙ったものです。

毎月、四半期に一度など定期的に配当金や利子が分配されるファンドです。各社で方針は違いますが、多くても少なくても配当や利子の分配だけに徹するものや、月々一定の受取額をもらえるよう配当、利回りに加え、元本部分の一部を現金化をするものもあります。終了のターゲット年を設定すると、その年までの間(例えば2042年終了など)、利回りとともに元本を計画的に崩しながら月々の一定額の確保に努める(2042年には元本を崩し終わる)という画期的なものもあります。リタイアメントに入ってからの投資としては魅力的に思いますが、残念ながらあまり投資資金が集まらず、最近は縮小傾向です。

いつもたどり着くのは、インデックスファンドでのパッシブ長期投資

常に新しい投資ファンドが開発され、常に新しい投資方法についての記事が書かれますから、それらの新しいものを前にした時、乗り換えや追加導入など自分の投資に変更を加えたほうがいいのかという疑問が沸き上がります。また、クライアントの方も興味を持って、問い合わせされることもしばしばあります。私はファイナンシャルプランナーとしてお客様に投資アドバイスをする者なので、それらについての私なりの考えを持つことが必要だとも思っています。

そこで、いろいろ調べたり考えたりしていつもたどり着くのは、多くの人にとっては低手数料のインデックスファンドを使った全世界分散のパッシブ長期投資が最もシンプルで、しかも最適であるということです。人それぞれ投資への思い入れや信じることが違うでしょうから、もちろん選択はそれぞれですが、一番面倒でなくて、効果的でシンプルなものと言われれば、やっぱり迷わずパッシブ長期投資をお勧めします。

そもそも、ESG投資もファクター投資も、また配当や利子を生むものにフォーカスして投資する方法も、程度の差こそあれ、「選ぶ」というアクティブ要素が入っています。まったく選ばない状態が、市場全体をまんべんなく持つインデックス投資だとすると、「選んだ」瞬間にそこから乖離します。その乖離が吉と出ることもあり凶と出ることもあるわけですが、それを長期間(10年目安)で考えた時、凶と出る可能性が高いということは、過去の金融機関および学術リサーチですでに多く語られています。凶と出る確率が高い理由は、ひとつに「選ぶ」労力にかかる手数料が高くなりがちであることと、もうひとつは「選ぶ」ことで条件に合致しないものを排除することになり、結果としてリスク分散が低くなることです。

ある時は〇〇ファンドの成績が非常によいということはあるでしょうが、長期間をおしなべて見た場合、全世界にリスク分散してただただ市場インデックスを持ち続ける方法のほうが統計的には勝因があるということです。配当や利子を生むものに投資してできるだけ投資部分を崩さないで運用できると聞けば魅力的に聞こえますが、それは配当や利子を生まないが大きくキャピタルゲインが期待できる株式を排除しているということで、これも残念なことです。ESG投資については思い入れがある場合は“納得感”という意味でそれもよい方法かと思いますが、投資先をかなり限定しているという特徴は理解しておくことが必要です。

シンプルさという意味でのお勧めは、全世界の経済成長に投資すると割り切って、ただパッシブ長期投資に徹することです。全世界の株式を時価総額に応じた形でまんべんなく持ち、加えてリスクレベルを調整するため債券ファンドを合わせ持つことです。例えばアメリカの個人投資家から多大な支持を得ている運用会社のひとつ、Vanguardなら以下の4ファンドで済みます。

・Total Stock Market (全米株式:CRSP US Total Market Index) ・Total International Stock(米国以外のインターナショナル株式:FTSE Global All Cap ex US Index) ・Total Bond Market  ( 全米債券:Bloomberg Barclays U.S. Aggregate Float Adjusted Bond Index) ・Total International Bond (米国以外のインターナショナル債券:Bloomberg Barclays Global Aggregate ex-USD Float Adjusted RIC Capped Index) *カッコ内は(投資対象:連動する指数)

運用会社によってはファンドが細分化されていてもう少し組み合わせないと全体をカバーできないこともありますが、とにかく一番基本的なインデックスファンドだけで全世界市場を持つのがキーです。こうした“基本ファンド”は歴史も長く、純資産残高も大きく、手数料は極小で、その組み合わせは一番シンプルで確実でもあります。日本でもこれらVanguardのETFは購入できるはずですが※、これでなくとも、日本株式、先進国株式、新興国株式、日本債券、先進国債券、新興国債券の各インデックスファンドを組み合わせれば同じ効果が出せます。
※編集部注:上記4本のファンドは日本からも海外ETFとして購入可能。ティッカーシンボルは上から、VTI、VXUS、BND、BNDX。

新しいものが出ても、古くなったものが廃れても、普遍的に有効であり続けるのは最も基本的なインデックスファンドだと考えます。足したり引いたりせず、ただ基本ファンドだけで全世界の市場にリスク分散し、そして良い時も悪い時もブレないで(何もしないで)いる……やっぱりこれが基本だと思うのです。