新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに乱高下する相場を見て、不安感を抱いた投資家も多いかもしれない。しかし一方で、環境問題や社会問題などに対応する企業に投資を行う「ESG投資」が、注目を浴びているのはご存じだろうか。事実、ESG関連の上場投資信託(ETF)への資金流入は、2020年1~4月のコロナ禍の渦中で一気に増え、すでに2019年の1年間を50%ほど上回っているという。

米国の運用会社においては、ESG関連のETFの本数を倍増させる動きがある他、国内でもESG関連の投資信託の設定が相次いでいる。環境問題などに積極的に取り組む企業は中長期的な業績成長が期待できるとの見方もあり、すでにESG投資が浸透しつつある機関投資家はもちろん、個人投資家の間でもこれからESG投資が本格化する可能性がありそうだ。

コロナ禍でなぜESG投資に目が向けられているのか?

そもそもESG投資とは、Environment(環境)・Society(社会的責任)・Governance(企業統治)への取り組みを重視した投資を指す。従来のように投資先の選定において、主に企業の売上や利益などの業績・財務情報などを参考にするだけではなく、環境や社会に配慮した経営を行っているかどうかも判断基準となる。

もともとESG投資が広まった背景としては、投資家意識の変化が挙げられる。世界各地で環境破壊や人権に関する問題が取り沙汰される中、それらの問題解決に積極的な企業への投資を増やし、そうではない企業には投資しないというスタンスに賛同する人が増えたため、機関投資家を中心に拡大していったと言われる。2008年のリーマン・ショックを経て、企業が短期的な利益を過剰に追求する姿勢への批判が高まったのも、ESG投資を後押しした。

すでに10年以上も前からESG投資という言葉は登場していたわけだが、なぜ今、注目されているのだろうか。

今回の新型コロナウイルスの発生原因ははっきり分かっていないものの、環境破壊によってもたらされた可能性も指摘されている。だからこそ、ESGの「E(環境)」に配慮した経営を行う企業に、投資家から注目されると考えられているわけだ。

さらに新型コロナウイルスの発生は、健康面の危機にもつながった。業種によって対応が難しい場合もあるが、従業員の感染リスクに配慮してリモートワークや時差出勤をすぐさま導入した企業などは、「S(社会的責任)」の要素でもある労働環境の改善に取り組む経営を行ったと言える。

アフターコロナの世界では、企業が「E」や「S」などの視点を持って経営を行っているかどうかが、投資の判断材料としてさらに定着することになりそうだ。