なぜ3DIPはスクウェア・エニックスを狙ったのか——「比較」と「資本コスト」の観点
第2の観点は、会社の目標水準を競合の実績と比べることである。目標を達成できるかだけでなく、その目標が同業のなかでどの位置にあるかを確かめる手法だ。
スクウェア・エニックス・HDと競合6社との比較
※競合6社…Electronic Arts、バンダイナムコHD、コナミグループ、ネクソン、カプコン、コーエーテクモHD
3DIPは、2025年3月期の営業利益率12.5%を競合6社の平均27.5%と比較して競合の半分程度にとどまると指摘。さらに過去3年間※の売上高成長率を見てもスクウェア・エニックス・HDを唯一のマイナス成長企業と位置づけている。
スクウェア・エニックス・HDは中期経営計画において、2026年3月期の売上高を2,800億円、営業利益率を14.6%、2027年3月期の営業利益率を15.0%と目標に掲げているが、2028年3月期以降の長期的な財務目標は開示していない。
※2022年3月期~2025年3月期
第3の観点は、複数事業を持つことの合理性を資本コストの面から検証することである。「コングロマリット・ディスカウント」(複数事業を抱えることで企業価値が割り引かれる現象)についてだ。3DIPは資本コストを押し上げる要因として、買い手層の限定、評価の不確実性、ガバナンス上のリスクを挙げ、シナジーがこれを上回るかを問うている。
スクウェア・エニックス・HDのゲーム事業評価
さらにアミューズメント事業と出版事業について、ゲーム事業との売上・コスト両面のシナジーが限定的だとする。
ただし注意が必要なのは、分析の型(フレームワーク)と結論は区別して捉えたい点だ。3DIPの資料は公表情報とインタビュー結果に基づいて作成されているが、同社はそれらを別途検証していないとも明記している。
個人投資家は、銘柄分析において同社の分解手法や比較の手順を参考に活用できるだろう。その一方で、事業におけるシナジーの大小についてはあくまで同資料における評価であり、事業別の利益率をどう捉えるか等、自身が判断するための材料として位置づけたい。


