「一緒に新しい居場所を探しませんか?」

実際にお会いした石津さんは、私よりひと回りほど若い、エネルギーにあふれた女性でした。大変な聞き上手でもあり、私は石津さんの前でつい、聞かれてもいないことまでべらべらとしゃべってしまいました。

私の愚痴を聞いた後、石津さんは「娘さんご一家にはご一家のライフスタイルがあるのだから、それは仕方ない。でも、谷口さんが我慢する必要はないと思います」と言い、私に「一緒に新しい居場所を探しませんか?」と提案してきました。

要は、今の家は香織一家に賃貸し、その家賃を元手に自分で賃貸物件を借りればいいというのです。「おうちからそう遠くない所で見つければ、お嬢さんやご近所のお友達とも普通に行き来できますよ」ということでしたが、最初は半信半疑でした。

第一、高齢者は賃貸物件を借りづらいと言われます。こんな郊外にそう高齢者向けの物件があるとは思えません。素朴な疑問を口にすると、石津さんは、ご自分が高齢者支援のNPO(特定非営利活動)法人に関わっていて、高齢者の住まい探しを何度もお手伝いしてきたこと、最近は高齢者専門のアパートやシェアハウスなども増えてきたことなどを丁寧に説明してくれました。

その上で、「谷口さんは社交的な性格で、人のお世話をするのも好きな方とお見受けしました。だったら、シェアハウスがお勧めです」と、具体的な物件の資料を見せてくれました。シェアハウスがどういうものかは知っていましたが、高齢者専門のシェアハウスがあるなんて知りませんでした。

「私の知り合いが運営している物件なので、見学をされるならお付き合いしますよ。強制ではありませんから、谷口さんが今の生活を続けたいとおっしゃるなら、その方向で対応を考えましょう」

そして、香織一家の生活についてはこういうものだと割り切って一切干渉しないこと、ただし、生活費については香織と話し合い、余計にかかった食費や雑費の一部を負担してもらうことを助言してくれたのです。

「孫消費も要注意です。これから下のお孫さんが成長するにつれ、習い事や塾などの費用も増えてきます。近くに孫がいるとあれもこれもと出してあげたくなりますが、お嬢さんと相談しながら、本当に必要なものだけに絞っていった方がいいと思います」

石津さんはそれに加え、「今は金利が上がってきていますから」と、主人が残してくれたお金や保険金を普通預金に置きっ放しにするのではなく、一部を国債などで運用することも勧めてくれました。